ゲノム編集細胞作製について
- ゲノム編集細胞作製の委託時には、どんな用意が必要でしょうか?
- 以下の情報・サンプルのご提供をお願いいたします。
・遺伝子情報(NCBIなどのアクセッションナンバー・ターゲットサイト・致死遺伝子情報等)
・ゲノム編集を行いたい細胞のご送付(1×10^6 cells/vial x2)
・培養環境(完全培地 500mlx2、特殊な培地を除く)
弊社では、弊社側での細胞購入対応はしておらず、お客様にご用意いただく形になります。なお、ノックインの場合は、下記に加え、ノックインする配列自体のご提供(含まれる配列のライセンス確認を含む)をお願いしております。 - VIKING法のメリットを教えて下さい。
- VIKING法の特徴は、ウイルスベクターでは困難な10kbpを超える大型ベクターの挿入ができること、薬剤耐性遺伝子などのマーカーとなる配列がゲノム配列に挿入されることにより、ゲノム編集後の細胞のセレクションが容易になることがあげられます。また、使用する3つのベクターの導入比率を最適化することにより、意図しない配列改変(ランダムインテグレーション)を劇的に低減することに成功しました。ターゲットを遺伝子のコーディング領域とした場合にはドナーベクターの挿入による遺伝子破壊株の樹立が可能であり、様々な細胞種での使用実績もあります。
- ゲノム編集細胞は通常どの様に納品されますか?
- 通常プランの場合、凍結細胞バイアル(1×10^6 cells/vial)にて、ご指定の1~2クローンを納品いたします。納品クローン数は、オプション(別途有償)にて増やすことが可能です。詳しくは、営業担当までお問い合わせください。
- VIKING 法ではどのような薬剤耐性遺伝子を利用可能でしょうか?
- ピューロマイシン、ブラストサイジン、ハイグロマイシンを弊社では使用しております。ご希望の薬剤耐性遺伝子がある場合、配列をご提供いただければ、利用可能です。
- VIKING 法では両アレルへのドナーベクター挿入が可能でしょうか?
- VIKING法では、片アレルへのドナーベクターの挿入ともう片方へのindelの導入がほとんどとなります。そのため、両アレルへのドナーベクター導入につきましては保証しておりません。
- なぜ、培養細胞では両アレルのゲノム編集が難しいのでしょうか?
- 一般的な培養細胞の多くは、染色体異常により対象遺伝子数が複数ある場合があります。従いまして、すべてのアレルにおけるゲノム編集は、染色体数、トランスフェクション効率、ターゲット領域の切断効率、相同組換の頻度など、様々な要因があるため難しくなっております。
- 培養細胞のゲノム編集について、ゲノム編集後に細胞を選び出す作業は具体的にどのように行うのでしょうか。
- ゲノム編集細胞のクローン化の工程は、接着細胞か浮遊細胞かで異なります。接着細胞の場合、抗生剤によるセレクション後のクローニングシリンダーによるシングルコロニーのピックアップによって行います。VIKING法では、ゲノム編集時に抗生剤耐性遺伝子の挿入を伴うため、コロニーのピックアップが容易です。また、耐性遺伝子の代わりに、蛍光タンパク質遺伝子を用いることもできます。浮遊細胞の場合、限界希釈法かシングルセル分注機を使用してピックアップします。
- ゲノム編集後のマウスや細胞でどのような変化があるかの確認まで対応可能でしょうか?
- 対応可能です。例えば、ウエスタンブロット、RT-PCR、RNA-seq、NGS等、弊社で受託可能です。詳細は、営業担当者までお問い合わせください。
- 作製後の細胞にマイコプラズマの汚染がないことは確認できますか?
- 対応可能です。マイコプラズマ由来のDNAをPCRにより検出するマイコプラズマ汚染簡易検査オプションをご提供しております。詳細は、営業担当者までお問い合わせください。
- ゲノム編集後のiPS細胞で核型解析を行うメリットは何でしょうか?
- 核型異常の起こったiPS細胞は腫瘍化リスクが増大することが報告されており、厚生労働省の特定認定再生医療等委員会においても、造腫瘍性評価の審査のポイントとされています。
cf. 厚生労働省 「特定認定再生医療等委員会におけるヒト多能性幹細胞を用いる 再生医療等提供計画の造腫瘍性評価の審査のポイント」の改訂について
ゲノム編集によるiPS細胞の染色体に与える影響は不明なため、ゲノム編集後の細胞で核型異常の有無を解析することで、iPS細胞の正常・異常判定が可能となります。弊社では、核型解析オプションとして、トリプシン処理とギムザ染色によるG-Band解析をご提供しており、染色体の異数性と構造異常を検出可能です。
参考文献
- Hashimoto, M. and Takemoto, T*. Electroporation enables the efficient mRNA delivery into the mouse zygotes and facilitates CRISPR/Cas9-based genome editing. Sci. Rep. 5, 11315; doi: 10.1038/srep11315 (2015).
- Hashimoto M, Yamashita Y, Takemoto T*.Electroporation of Cas9 protein/sgRNA into early pronuclear zygotes generates non-mosaic mutants in the mouse. Dev. Biol. 418: 1-9 (2016).
- Tanihara F, Takemoto T*, Kitagawa E, Rao S, Do L, Onishi A, Yamashita Y, Kosugi C, Suzuki H, Sembon S, Suzuki S, Nakai M, Hashimoto M, Yasue A, Matsuhisa M, Noji N, Fujimura T, Fuchimoto Di, Otoi T*. Somatic cell reprogramming-free generation of genetically modified pigs. Science Advances. 2 (9) e1600803 (2016).
- Sawatsubashi S*, Joko Y, Fukumoto S, Matsumoto T, Sugano SS*. Development of versatile non-homologous end joining-based knock-in module for genome editing. Sci Rep. 2018 Jan 12;8(1):593.