ゲノム編集マウス作製(個体納品)について
- ゲノム編集マウス作製の依頼時には、どんな用意が必要でしょうか?
- 以下の情報のご提供をお願いいたします。
・遺伝子情報(NCBIなどのアクセッションナンバー・ターゲットサイト・致死遺伝子情報等)
・マウス系統(ご希望のマウス系統の情報)
・マウスの飼育環境(納品先のSPF基準など)
・対象遺伝子の致死性・生殖能力への影響
・納品希望匹数・性別
なお、ノックインサービスの場合は、上記の情報に加えて、ノックインする配列自体のご提供(含まれる配列のライセンス確認を含む)をお願いしております。 - 特殊な系統のマウスでも対応可能でしょうか?
- 対応可能ですが、別途有償での対応となります。
マウスは系統ごとに、採卵数や受精率、胚発生率などが異なりますので、弊社にて実績のないマウス系統については別途有償での対応とさせていただいております。
また、予備試験の必要がある場合には、別途有償での対応となる場合がございます。詳細はお問い合わせください。なお弊社では、C57BL/6, Balb/c, ICR, C3H, BDF1 のマウス系統を「通常系統」とさせていただいております。 - エクソンなど大きな領域を欠損させたマウスの作製は可能でしょうか?
- エクソン欠損マウス作製サービスにて、対応可能です。2つのgRNAを共導入することで2カ所の切断を引き起こし、挟まれた領域を欠損させます。弊社の実績では、10kb程度までは問題なく実施できております。それ以上の長さの欠損をご希望の場合は、お問い合わせください。
- 最長でどの程度の配列のノックインが可能でしょうか?
- 最長では5-7kbpの実績を持っております。まずはご相談ください。
- ゲノム編集マウスは、何匹納品されるでしょうか?
- F1マウスでの個体納品の場合、2匹以上(雌雄選択不可)を目標としております。事前にご指定の納品頭数がある場合は、営業担当者までご相談ください。
- ゲノム編集マウスの納品実績を教えて下さい。
- 2022年6月時点では、ゲノム編集マウス個体の納品では納品率91.0%、ゲノム編集マウス受精卵の納品では納品率97.2%となっております。
- 使用している動物実験施設の飼育環境について教えて下さい。
- 弊社では、徳島大学先端酵素学研究所プロテオゲノム研究領域動物実験施設内において、国の実験動物指針に従って、マウス作製業務を実施しております。マウス飼育環境につきましては、同施設利用の手引きおよび動物飼育管理 SOP(Standard Operating Protocol)に則って、業務を行っております。
徳島大学 動物実験施設
弊社では、徳島大学動物実験委員会の定める下記の SPF グレードで飼育を行っております。詳細は以下をご参照ください。
徳島大学 マウス、ラット微生物定期検査 - 追加の微生物検査(モニタリング)を行ってもらえますか?
- 対応可能です。以下の16検査項目以外の検査項目の追加は、有償での対応となります。検査実施機関のご指定がなければ、実験動物中央研究所に依頼いたします。
・ティザー菌(Clostridium piliforme)
・エクトロメリアウィルス(Ectromelia virus)
・リンパ球性脈絡髄膜症(LCM virus)
・マウス肝炎ウイルス(Mouse hepatitis virus)
・肺マイコプラズマ(Mycoplasma pulmonis)
・センダイウイルス(Sendai virus)
・腸粘膜肥厚症菌(Citrobactoer rodentium)
・ネズミコリネ菌(Corynebacterium kutscheri)
・肺マイコプラズマ(Mycoplasm pulmonis)
・肺パスツレラ(Pasteurella pneumotropica)
・サルモネラ(Salmonella spp.)
・消化管内原虫(Instestinal protozoa)
・蟯虫(Pinworm)
・外部寄生虫(Ectoparasites)
・ヘリコバクター・ヘパティカス(Helicobacter hepaticus)
・ヘリコバクター・ビリス(Helicobacter bilis) - マウスの繁殖や飼育のみの試験委託も可能でしょうか?
- 対応可能です。繁殖後のマウス動物試験についても対応可能ですので、詳細は営業担当へお問い合わせください。
- ゲノム編集後のマウスや細胞でどのような変化があるかの確認まで対応可能でしょうか?
- 対応可能です。例えば、ウエスタンブロット、RT-PCR、RNA-seq、NGS等、弊社で受託可能です。詳細は、営業担当者までお問い合わせください。
- 産まれてきた次世代のマウス個体で目的のゲノム編集が起こっているかは、どのように確認すればよいでしょうか?
- 納品する試験報告書には、弊社で目的変異を確認した際のPCRの条件、プライマー情報等を記載しております。また、産仔解析のみでもご依頼いただくことが可能です。産まれたマウス個体の耳パンチや尻尾のサンプルを弊社に送っていただくだけで、お手軽にジェノタイピングが可能です。ぜひご検討ください。
- 納品後、実験室で増やしたマウスなどのジェノタイピングを依頼することは可能でしょうか?
- 対応可能です。マウスの尾部サンプルを弊社まで冷凍便でお送り頂き、解析結果をレポートでお返しいたします。詳細は、営業担当者までお問い合わせください。
- オフターゲット変異の解析は可能でしょうか?
- 弊社では、オフターゲット変異解析オプションをご用意しております。
オフターゲット変異解析オプションをご利用いただきますと、使用するgRNA配列と類似した「オフターゲットの可能性のある配列情報リスト(オフターゲット候補リスト)」をご提供いたします。次に、オフターゲット候補リストのゲノム配列について、PCRおよびダイレクトシークエンスにより配列確認を行います。
通常、塩基欠損マウス作製などの場合は、設計時に複数のgRNA配列候補の中から、なるべくオフターゲット変異の可能性が低いものを選択しております。しかし、点変異マウス作製においては、目的点変異箇所近傍にgRNAを設計する必要があり、選択できるgRNA配列候補が限定されます。こういった場合、オフターゲット変異が起こるリスクも高くなります。オフターゲット変異は、交配による次世代作出によって分離することが可能ですが、その都度解析必要となり、結果的に費用がかかります。点変異マウスの場合は、マウス作製と同じタイミングで、オフターゲット変異の確認を行うことをおすすめします。 - ゲノム編集による配列改変が、次の世代に引き継がれないことはありますか?
- ごく稀にゲノム編集による配列改変が、次世代に遺伝子ない場合があります。
受精卵でゲノム編集を行なった場合、ゲノム編集因子が機能したタイミングにより、同一個体を構成する細胞の中で、変異の有無や入り方が不均一に混在する「モザイク」個体(F0)になる場合があります。
そのため、F0マウス耳片の解析で目的変異が認められても、次世代を産み出す生殖細胞系列(将来の精子や卵子)で目的変異が導入されていない場合がございます。その場合には、目的変異を持つ次世代は得られません。弊社のGEEP法は、ゲノム編集マウス作製において、「モザイク」になることが少ない技術ではございますが、完全に「モザイク」の可能性を排除することはできません。そのため弊社では、目的変異を持つF1世代のマウスでの納品をおすすめしております。 - 一度に複数の遺伝子のノックアウトは可能でしょうか?
- 一度に複数遺伝子のゲノム編集は推奨はしておりませんが、ご相談には対応可能です。詳細は、営業担当者までご相談ください。
- 凍結胚や凍結精子作製も対応可能でしょうか?
- 対応可能です。詳細は、営業担当者までお問い合わせください。
- 凍結精子の作製はどのように実施していますか?
- 弊社では、熊本大学CARD(Center for Animal Resources and Development)のプロトコルに則って実施しています。詳しくは以下よりご確認ください。
熊本大学 マウス生殖工学マニュアル
- 組織切片の作成は可能でしょうか?
- 対応可能です。詳細は、営業担当者までお問い合わせください。
- トランスジェニックマウスの作製にも対応できますか?
- 対応可能です。通常サービスとは異なりますので、詳細は営業担当へお問合せください。
参考文献
- Hashimoto, M. and Takemoto, T*. Electroporation enables the efficient mRNA delivery into the mouse zygotes and facilitates CRISPR/Cas9-based genome editing. Sci. Rep. 5, 11315; doi: 10.1038/srep11315 (2015).
- Hashimoto M, Yamashita Y, Takemoto T*.Electroporation of Cas9 protein/sgRNA into early pronuclear zygotes generates non-mosaic mutants in the mouse. Dev. Biol. 418: 1-9 (2016).
- Tanihara F, Takemoto T*, Kitagawa E, Rao S, Do L, Onishi A, Yamashita Y, Kosugi C, Suzuki H, Sembon S, Suzuki S, Nakai M, Hashimoto M, Yasue A, Matsuhisa M, Noji N, Fujimura T, Fuchimoto Di, Otoi T*. Somatic cell reprogramming-free generation of genetically modified pigs. Science Advances. 2 (9) e1600803 (2016).
- Sawatsubashi S*, Joko Y, Fukumoto S, Matsumoto T, Sugano SS*. Development of versatile non-homologous end joining-based knock-in module for genome editing. Sci Rep. 2018 Jan 12;8(1):593.