ノックアウトマウス作製―遺伝子機能喪失技術の戦略と実例

本記事では、セツロテック技術Webセミナー “ゲノム編集を用いたマウスの作製”での講演内容を基に、ノックアウトマウス作製におけるゲノム編集技術の手法について詳しく説明します。

ノックアウトマウス作製では、セツロテックでは大きく分けて2つのサービスを提供しています。1つは塩基欠損マウスというもので、標的遺伝子の一部の配列の欠損によってフレームシフトやナンセンス変異を引き起こします。もう1つはエクソン欠損マウスで、翻訳されるエクソンを1つ(あるいは複数)を欠損させます。

いずれもマウスの全身の細胞で標的タンパク質が機能しないマウスを作製するものであり、遺伝子の役割解明や疾患モデルの構築に活用されるモデル生物が作製されます。

ノックアウトマウス作製①_塩基欠損マウス

塩基欠損マウス作製では、遺伝子のうち翻訳される領域(図の黒く塗られた部分)の一部をゲノム編集のハサミで切断します。

ノックアウトマウス作製_塩基欠損マウス

切断されたDNAは、細胞内の修復機構によって再構成される際に、修復エラーによってフレームシフトが発生することがあります。例えば、CTや色分けされた部分が切断されると、欠損または挿入が生じ、本来の配列のフレームがずれてしまいます。その結果、正常な配列が異常な配列に変化し、そこでストップコドンが出現すると翻訳が途中で終了し、正常なタンパク質が生成されなくなります。設計段階では、フレームシフト後にできるだけ早い段階でストップコドンが現れるよう工夫する、また、欠損箇所よりN末端側のタンパク質は正常に作られる可能性があるため、できるだけN末端側で切断し、転写・翻訳開始後に速やかにストップコドンが現れるようにゲノム編集の設計を行います。

ノックアウトマウス作製_塩基欠損マウス

ノックアウトマウス作製②_エクソン欠損マウス

エクソン欠損マウス作製では、標的エクソンを挟むように切断を行います。例えば、エクソン2が機能ドメインであると仮定すると、このエクソン2を両側から切断することで、エクソン2が全く欠損した変異型マウスを作成することが可能となります。つまり、機能ドメインや翻訳開始ドメインなど、除去したいドメインを含むエクソンを欠損させることで、その機能が喪失されます。

ノックアウトマウス作製②_エクソン欠損マウス

標的エクソンの除去により、欠損されなかった部分が不適切に連結されるリスクもあるため、どのエクソンを標的にするかは慎重な検討が必要です。この点につきましては、弊社にご相談いただければ、最適な提案をさせていただきます。もちろん、全エクソンの除去も可能です。
切断箇所は、両側ともイントロンに設計することもできますし、一方がエクソンに少し入り込む形で欠損させることも可能です。その場合、仮に2つの標的エクソンが欠損しなかったとしても、このエクソン内部を切断することでフレームシフトを誘発することが可能ですので、詳細はお問い合わせください。

ノックアウトマウスを用いた実際の例_Osr1欠損マウス

ノックアウトマウスを用いた実際の例として、セツロテックCTO兼、徳島大学先端酵素学研究所の竹本教授の研究室で行った、Osr1という遺伝子の翻訳領域全体を除去した欠損マウスの作製をご紹介します(下図:本来転写因子をコードすべき黒い領域が、欠損型ではなくなっている)。

ノックアウトマウスを用いた実際の例_Osr1欠損マウス

この欠損マウスでは将来腎臓を構成する細胞集団が消失していることがわかりました。
下の組織解析画像では、将来腎臓を形成する細胞の集団「ウォルフ管」「後腎管葉」を観察しています。野生型の図では赤色で示される「後腎管葉」と緑色矢頭で示される「ウォルフ管」とが形成されています。一方でOsr1変異体では、赤色で示される「後腎管葉」が全く見られなくなることが確認されました。さらに「後腎管葉」が消失した部分には将来骨や筋肉を形成する細胞集団のマーカーであるFoxC2の発現領域が拡大していることが確認されました。

ノックアウトマウスを用いた実際の例_Osr1欠損マウス

これらの結果から、Osr1という遺伝子は、将来腎臓を形成する細胞の1つ「後腎管葉」の形成に重要な役割を果たしていることが実証されました。

まとめ

本記事では、ノックアウトマウスを作製するセツロテックの2つのサービスの解説と、具体例としてOsr1欠損マウスを紹介しました。これらの手法は、皆さんの研究されている遺伝子機能の解析や疾患モデルの構築において非常に有効な手段です。いずれの手法がよいか、設計など、セツロテックまでお尋ねください。

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