2025年2月のX(Twitter)紹介ゲノム編集論文&ニュース

株式会社セツロテックのX(旧Twitter)アカウントでは、ゲノム編集に関する論文やニュースを、弊社メンバーが独断と偏見でピックアップしてつぶやいています。弊社の提供するサービスとは直接関係ない情報も含め、幅広くお届けしております。ゲノム編集技術の社会実装を目指す大学発ベンチャーとして、皆さんの新技術への理解増進の一助になれば幸いです。ぜひ、フォローを!ここでは、2025年2月のポストで紹介した内容を再編成して掲載いたします。なお、本記事の内容は、発表された論文やニュースの内容を紹介するものであり、会社としての正式な見解では無く、担当者個人の理解によるものです。
Index
Cas12aノックインマウスを活用した超小型スクリーニング
Advancing the genetic engineering toolbox by combining AsCas12a knock-in mice with ultra-compact screening
Jin et al., Nat Commun. 2025 Jan 30;16(1):974
https://doi.org/10.1038/s41467-025-56282-2
ノックインゲノム編集で AsCas12a を恒常的に発現するマウスを作製し、
Cas12a が前臨床モデルへ利用できることを報告。
併せてコンパクトでゲノムワイドな crRNA ライブラリーも開発し、
このマウス由来の細胞で超小型 CRISPR スクリーニングが実施できた。
(Nature Communications誌)
放線菌ゲノムに最適化されたゲノム編集システム
Engineered CRISPR-Cas9 for Streptomyces sp. genome editing to improve specialized metabolite production
Kim et al., Nat Commun. 2025 Jan 21;16(1):874
https://doi.org/10.1038/s41467-025-56278-y
GC含量の高いゲノムを持つ放線菌のために、
最適化された CRISPR-Cas9 システムを開発。
オフターゲット結合と細胞毒性が減少するように、
N末端とC末端にポリアスパラギン酸を付加した改変 Cas9(Cas9-BD)を開発した。
(Nature Communications誌)
ゲノム編集技術でダウン症患者由来iPS細胞のトリソミーを解消
Trisomic rescue via allele-specific multiple chromosome cleavage using CRISPR-Cas9 in trisomy 21 cells
Hashizume et al., PNAS Nexus. 2025 Feb 18;4(2):pgaf022
https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgaf022
ダウン症患者由来の iPS 細胞において、
多重 CRISPR-Cas9 ゲノム編集で 21 番染色体のトリソミーを解消することに成功。
対立遺伝子特異的な Cas9 標的配列抽出法を開発したことで、
3 本ある相同染色体の特定の 1 本を除去することが可能になった。
(PNAS Nexus誌)
高度に保存された開花プロセスの調節メカニズム
Antagonizing cis-regulatory elements of a conserved flowering gene mediate developmental robustness
Lanctot et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2025 Feb 25;122(8):e2421990122
https://doi.org/10.1073/pnas.2421990122
CRISPR ゲノム編集で、
植物の開花プロセスを調節する UFO 遺伝子のシス制御配列(遠縁の顕花植物で保存されていた非コード配列)に変異を導入。
興味深いことに、相同配列の編集であっても、
トマトとシロイヌナズナでは、花の形成 or 開花抑制と真逆の表現型が得られた。
(PNAS誌)
たった425アミノ酸の「NanoCas」が登場
A new ‘mini-CRISPR’ flexes its editing power in monkey muscles
Couzin-Frankel, Science. 2025 Feb 7;387(6735):570
https://doi.org/10.1126/science.zarx6ub
たった 425 アミノ酸(Cas9 の 1/3 サイズ)の「NanoCas」による
マカクザルでの in vivo ゲノム編集が、プレプリントで報告されたとのこと。
単一の AAV ベクターに搭載できる利点を最大限に活かし、
デュシェンヌ型筋ジストロフィーなどの治療を目指す。
(Science のニュース記事)
CRISPR技術によるRNA分子のライブセルイメージング
Single-molecule live-cell RNA imaging with CRISPR-Csm
Xia et al., Nat Biotechnol. 2025 Feb 18 (Online ahead of print)
https://doi.org/10.1038/s41587-024-02540-5
修飾を必要としない内在性 RNA の 1 分子ライブセルイメージング「smLiveFISH」を開発。
RNA を標的とする CRISPR-Csm 複合体を利用し、
多重ガイド RNA で蛍光タグ付き RNP を標的 RNA に沿って同時に並べることで、
シグナル対ノイズ比を高める。
(Nature Biotechnology誌)
名馬の遺伝子をゲノム編集で「再現」する
Argentina breeds gene-edited polo super ponies
Reuters 2025年2月4日
https://www.reuters.com/science/argentina-breeds-gene-edited-polo-super-ponies-2025-02-04/
CRISPR-Cas9 技術でゲノム編集したウマが、
世界で初めて誕生。
アルゼンチン・ポロの名牝「Polo Pureza」の遺伝子を再現する。
(ロイター通信)
イネのABAシグナル伝達経路におけるネガティブレギュレーター
The abscisic acid signaling negative regulator OsPP2C68 confers drought and salinity tolerance to rice
Wang et al., Sci Rep. 2025 Feb 25;15(1):6730
https://doi.org/https://doi.org/10.1038/s41598-025-91226-2
アブシジン酸シグナル伝達の制御因子である PP2CA 遺伝子ファミリーのイネでの役割を調べるために、
CRISPR-Cas9 ゲノム編集を使用。
OsPP2C68 ノックアウト変異体では、
気孔閉鎖率が高く、干ばつや塩に対する耐性が向上した。
(Scientific Reports誌)
プライム編集でコエンザイムQ10を合成できるコメやコムギを作出
Design of CoQ10 crops based on evolutionary history
Xu et al., Cell. 2025 Feb 11:S0092-8674(25)00087-X
https://doi.org/10.1016/j.cell.2025.01.023
コエンザイム Q は生物種によってイソプレノイド鎖長が異なるが、
コメとコムギの Coq1 遺伝子を改変し、
主食植物で CoQ10 を合成できるようにした。
1000種以上のホモログ解析から、
Coq1 触媒ポケットにおける重要なアミノ酸変化を特定し、
多重プライム編集で再現した。
(Cell誌)
「はらぺこ」の肥満細胞を作ってがん細胞を兵糧攻めする
Implantation of engineered adipocytes suppresses tumor progression in cancer models
Nguyen et al., Nat Biotechnol. 2025 Feb 4 (Online ahead of print)
https://doi.org/10.1038/s41587-024-02551-2
CRISPRa で白色脂肪細胞が活発にカロリー消費するようにすることで、
周囲の腫瘍細胞を「餓死」させることに成功。
UCP-1 遺伝子を上方制御した脂肪細胞を、
モデルマウスの腫瘍の近くに移植すると、
がんの進行と増殖が大幅に抑制された。
(Nature Biotechnology誌)