2025年1月のX(Twitter)紹介ゲノム編集論文&ニュース

株式会社セツロテックのX(旧Twitter)アカウントでは、ゲノム編集に関する論文やニュースを、弊社メンバーが独断と偏見でピックアップしてつぶやいています。弊社の提供するサービスとは直接関係ない情報も含め、幅広くお届けしております。ゲノム編集技術の社会実装を目指す大学発ベンチャーとして、皆さんの新技術への理解増進の一助になれば幸いです。ぜひ、フォローを!ここでは、2025年1月のポストで紹介した内容を再編成して掲載いたします。なお、本記事の内容は、発表された論文やニュースの内容を紹介するものであり、会社としての正式な見解では無く、担当者個人の理解によるものです。

ウールを採るメリノ種のヒツジにたくさん子供を産ませる

Generation and propagation of high fecundity gene edited fine wool sheep by CRISPR/Cas9
Zhang et al., Sci Rep. 2025 Jan 20;15(1):2557
https://doi.org/10.1038/s41598-025-86592-w

ウールを採るメリノ種のヒツジで、CRISPR-Cas9ゲノム編集により、産子数を増加させることに成功。ssODNを用いたHDRゲノム編集で、BMPRIB 遺伝子に点変異(c.746 A>G)を導入したところ、F1世代のヘテロの雌羊での平均同腹子数は170%に達した。Scientific Reports誌。

インスリン抵抗性のモデルラットをゲノム編集で作出

Deletion of IRS-1 leads to growth failure and insulin resistance with downregulation of liver and muscle insulin signaling in rats
Toyoshima et al., Sci Rep. 2025 Jan 8;15(1):649
https://doi.org/10.1038/s41598-024-84234-1

CRISPR-Cas9ゲノム編集で、インスリン受容体基質IRS-1欠損ラットの作出に成功。ノックアウトラットでは、成長障害とインスリン抵抗性(十分な量のインスリンがあるのに効かない状態)を示し、モデルラットとして使用できる。宇都宮大学らのチーム。Scientific Reports誌。

精子形成におけるY染色体遺伝子の機能を系統的に同定

Systematic identification of Y-chromosome gene functions in mouse spermatogenesis
Subrini et al., Science. 2025 Jan 24;387(6732):393-400
https://doi.org/10.1126/science.ads6495

CRISPR-Cas9ゲノム編集で、Y染色体遺伝子やヒト不妊関連の遺伝子の組み合わせを欠失させた13種類のモデルマウスを作製し、どのY遺伝子が精子形成を制御しているか解析。各変異体が、精子形成や減数分裂、精巣のトランスクリプトームに及ぼす影響を特徴付けた。Science誌。

メダカは眼だけでなく脳でも光を感じている

Direct photoreception by pituitary endocrine cells regulates hormone release and pigmentation
Fukuda et al., Science. 2025 Jan 3;387(6729):43-48
https://doi.org/10.1126/science.adj9687

メダカの脳下垂体が、直接光を受容してホルモンを放出し、体表でのメラニン産生を促進していることを発見。脳下垂体で発現する非視覚性光受容体の Opn5m を、CRISPRゲノム編集でノックアウトした変異体では、UV光を照射してもメラニンの体表への蓄積が少なかった。Science誌。

CRISPRによる治療でジスフェリン欠損を改善できる

Gene-editing in patient and humanized-mice primary muscle stem cells rescues dysferlin expression in dysferlin-deficient muscular dystrophy
Escobar et al., Nat Commun. 2025 Jan 2;16(1):120
https://doi.org/10.1038/s41467-024-55086-0

遺伝性の筋ジストロフィーの原因となる DYSF 遺伝子変異を持つ疾患モデルマウスから初代筋幹細胞を採取し、このエラーをCRISPRゲノム編集で修正したうえで再度移植すると、機能的なジスフェリンタンパク質が復活し、筋肉が再生し始めた。Nature Communications誌。

コオロギのノックインゲノム編集法を確立

Establishment of CRISPR/Cas9-based knock-in in a hemimetabolous insect: targeted gene tagging in the cricket Gryllus bimaculatus
Matsuoka et al., Development. 2025 Jan 1;152(1):dev199746
https://doi.org/10.1242/dev.199746

徳島大学らのチームが、二ホンコオロギのCRISPR-Cas9ゲノム編集技術を確立。ドナー配列を標的遺伝子のエクソンにノックインして、その機能を「ノックアウト」する方法を報告した。Development誌。この論文は、1/23のScience誌の “In Other Journals” コーナーで紹介されていた。

トマトの品種改良の過程で蓄積された「悪い」変異を取り除く

Repairing a deleterious domestication variant in a floral regulator gene of tomato by base editing
Glaus et al., Nat Genet. 2025 Jan;57(1):231-241
https://doi.org/10.1038/s41588-024-02026-9

トマトの育種の過程で、望ましい形質との共選択によって蓄積された「望ましくない」遺伝子変異を、塩基編集で取り除く。品種改良前の祖先と家畜化後の配列を比較して特定した有害な変異を「修正」すると、コンパクトに成長し、早期に果実を収穫できた。Nature Genetics誌。

1塩基を編集するだけでプリオン病モデルマウスの寿命が1.5倍に

In vivo base editing extends lifespan of a humanized mouse model of prion disease
An et al., Nat Med. 2025 Jan 14 (Online ahead of print)
https://doi.org/10.1038/s41591-024-03466-w

塩基編集を用いて、プリオン病のモデルマウスで寿命を約50%延長することに成功。PRNP 遺伝子に1文字の変化(R37X)を加えるだけで、脳内のプリオンタンパク質が平均63%減少。臨床的に重要であると予想されるオフターゲット編集は検出されなかった。Nature Medicine誌。

ゲノム編集後に外来DNAが残っていないかをチェックする

(研究成果)次世代シーケンサーを用いた外来DNA検出法(k-mer法)解析ツール “GenEditScan” を公開
農研機構 プレスリリース 2025年1月22日
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/naac/167351.html

農研機構が、ゲノム編集作物に外来DNAが残存していないことを、k-mer法で解析できるツール「GenEditScan」を開発し、無料公開。次世代シーケンサーで解読した変異体のゲノム情報をワンステップで解析でき、利用者の知識や経験によらず、簡便に同じ結果が得られる。

ニワトリの卵のオボムコイドを欠損させても加工特性は変わらない

Ovomucoid-null eggs produced via genome-editing technology: Protein composition and physicochemical properties
Koyama et al., Food Bioscience. 2025 Dec 24;63:105759
https://doi.org/10.1016/j.fbio.2024.105759

TALENによるゲノム編集で、オボムコイドを欠損させたニワトリの卵では、オボムコイドが消失していること以外は、通常卵とほぼ同じ基本性状と加工特性を示した。卵白の起泡性や全卵マヨネーズの性状でも差異はなかった。Food Bioscience誌。

アマ(亜麻)でのCRISPR-Cas9ゲノム編集に成功

Establishment of a CRISPR-Cas9-Mediated Genome Editing System in Flax
Wang et al., CRISPR J. 2025 Jan 13 (Online ahead of print)
https://doi.org/10.1089/crispr.2024.0064

リネンの原料となるアマ(亜麻)でのCRISPR-Cas9ゲノム編集に成功。フィトエン不飽和化酵素をコードする PDS 遺伝子をノックアウトすると、形質転換カルスおよび選択培地上で再生した小植物体でアルビノ表現型が観察された。The CRISPR Journal誌。

ゲノム編集技術でナナフシの眼の色を変える

Pioneering genome editing in parthenogenetic stick insects: CRISPR/Cas9-mediated gene knockout in Medauroidea extradentata
Di Cristina et al., Sci Rep. 2025 Jan 20;15(1):2584
https://doi.org/10.1038/s41598-025-85911-5

ナナフシのCRISPR-Cas9ゲノム編集に成功。眼のオモクローム系色素に関係する cinnabar 遺伝子のオルソログをノックアウトすると、胚のクチクラに色素斑がなく、眼にも色素がなかった。単為生殖なので、第1世代で安定した変異系統が得られる利点がある。Scientific Reports誌。

種皮の色が黄色いナタネは良いナタネ

A rare dominant allele DYSOC1 determines seed coat color and improves seed oil content in Brassica napus
Li et al., Sci Adv. 2025 Jan 3;11(1):eads7620
https://doi.org/10.1126/sciadv.ads7620

アブラナ科植物において、種子の皮の色が黄色であることは、油含量の多さなど望ましい形質の「目印」となってきた。QTLファインマッピングにより、新規に DYSOC1 遺伝子をクローニング。CRISPRゲノム編集でこの遺伝子をKOして、形質の変化を確認した。Science Advances誌。

「ゲノム編集」を理解してもらうためにはまだまだ努力が必要

「ゲノム編集食品」届け出制度化から5年…高GABAトマトなど流通も「知らない」9割超
読売新聞 2025年1月27日
https://www.yomiuri.co.jp/national/20250127-OYT1T50011/

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