2024年12月のX(Twitter)紹介ゲノム編集論文&ニュース

株式会社セツロテックのX(旧Twitter)アカウントでは、ゲノム編集に関する論文やニュースを、弊社メンバーが独断と偏見でピックアップしてつぶやいています。弊社の提供するサービスとは直接関係ない情報も含め、幅広くお届けしております。ゲノム編集技術の社会実装を目指す大学発ベンチャーとして、皆さんの新技術への理解増進の一助になれば幸いです。ぜひ、フォローを!ここでは、2024年12月のポストで紹介した内容を再編成して掲載いたします。なお、本記事の内容は、発表された論文やニュースの内容を紹介するものであり、会社としての正式な見解では無く、担当者個人の理解によるものです。
Index
弊社X担当者の1年間の頑張りがちょっとだけ報われた論文
Growing knowledge impact of gene-editing technology on public acceptance: a longitudinal analysis in Japan
Sato et al., GM Crops Food. 2024 Dec 6;15(1):411–428.
https://doi.org/10.1080/21645698.2024.2435709
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2018年から2023年にかけて消費者の反応を調査し、ゲノム編集技術についての消費者の知識の向上が、社会受容をより高めることを明らかにした。社会における技術の採用を加速させるためには、正確で利用しやすく、最新の情報を提供し「続ける」ことが大事。GM Crops & Food誌。
ノーベル賞受賞者が語るAIとCRISPRの融合
Combining AI and Crispr Will Be Transformational
WIRED. 2024年11月26日
https://www.wired.com/story/combining-ai-and-crispr-will-be-transformational/
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ノーベル賞受賞者のダウドナさんが語る、AIとCRISPRの融合。実際に、公共ゲノムデータベースからこれまで見つけられなかった、より小さなゲノムエディターを発見したり、天然配列に比べて耐熱性の高い新しい機能性RNA分子を予測したり、人工知能の活躍の場が広がっている。WIRED誌。
マウス2細胞期胚でのエレクトロポレーションゲノム編集
Efficient genome editing of two-cell mouse embryos via modified CRISPR/Cas electroporation
Sakurai et al., Sci Rep. 2024 Dec 5;14(1):30347.
https://doi.org/10.1038/s41598-024-81198-0
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2つの割球の接触面を電極に対して垂直になるように胚の向きをそろえることで、マウス2細胞期胚でのエレクトロポレーションが可能に。割球融合によって4倍体になることを防ぎ、効率的なゲノム編集が実施できた。Scientific Reports誌。
魚の胚が自らの「誕生日」を決める方法
A transient neurohormonal circuit controls hatching in fish
Gajbhiye et al., Science. 2024 Dec 6;386(6726):1173-1178.
https://doi.org/10.1126/science.ado8929
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甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(Trh)が、魚類の卵のふ化を活性化する神経内分泌因子であることを発見。ゼブラフィッシュのtrh遺伝子をCRISPR-Cas9ゲノム編集でノックアウトすると、絨毛膜を溶解できなくなり、幼生が外に泳ぎだせず、ふ化に失敗した。Science誌。
超音波で熱を発生させてCRISPRゲノム編集のスイッチを入れる
Ultrasound Control of Genomic Regulatory Toolboxes for Cancer Immunotherapy
Wu et al., Nat Commun. 2024 Dec 1;15(1):10444.
https://doi.org/10.1038/s41467-024-54477-7
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超音波を使って、CRISPRゲノム編集を「リモートコントロール」する技術を開発。熱感受性プロモーターの制御下でgRNAが産生されるように設計し、生体組織に局所的な温熱を誘導できる集束超音波をトリガーとして、CRISPRツールボックスを機能させる。Nature Communications誌。
翅がなくて外へ逃げ出せないゲノム編集ミズアブ
Wingless strain created using binary transgenic CRISPR/Cas9 alleviates concerns about mass rearing of Hermetia illucens
Kou et al., Commun Biol. 2024 Dec 19;7(1):1652.
https://doi.org/10.1038/s42003-024-07254-7
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食品廃棄物を処理する際の大量飼育時に外へ逃げ出せないように、翅がなく、交尾能力を欠くゲノム編集ミズアブを作製。コロニーを維持できるように、Cas9発現系統とsgRNA発現系統を作製し、これらの遺伝的交配で変異体を維持できるようにした。Communications Biology誌。
CRISPRによる遺伝子治療が急速に広がりつつある
CRISPR genome-editing grows up: advanced therapies head for the clinic
Ledford, Nature. 2024 Dec 17 (Online ahead of print)
https://doi.org/10.1038/d41586-024-04102-w
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CRISPRによる遺伝子治療についてのNature誌のニュース記事。Casgevyの臨床での利用承認から1年が経ち、その大きな治療効果が明らかになったことが呼び水となり、他の遺伝子疾患への治療法の開発も急速に進んでいる。一方、高額な治療費(220万ドル!)の問題も残る。
過剰発現させるとポプラの樹高を2倍にする遺伝子
An orphan gene BOOSTER enhances photosynthetic efficiency and plant productivity
Feyissa et al., Dev Cell. 2024 Nov 28:S1534-5807(24)00667-1.
https://doi.org/10.1016/j.devcel.2024.11.002
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ポプラの木の樹高を伸ばす遺伝子を発見。BOOSTERと名付けられたこの遺伝子は、ルビスコ含有量と光合成活性を高め、成長を大幅に促進する。温室環境下では、BOOSTERを過剰発現させた系統は、野生型と比較して、草丈は最大2倍近くになった。Developmental Cell誌。
ジャガイモのソラニンを消失させるゲノム編集
A cellulose synthase–like protein governs the biosynthesis of Solanum alkaloids
Jozwiak et al., Science. 2024 Dec 20;386(6728):eadq5721.
https://doi.org/10.1126/science.adq5721
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昆虫に対する化学的防御として、ジャガイモやトマトで蓄積されるステロイドグリコアルカロイド(SGA)の生合成に関わる遺伝子を同定。CRISPR-Cas9ゲノム編集で、ジャガイモのGAME15遺伝子をノックアウトすると、SGAであるα-ソラニン産生量が完全に消失した。Science誌。
フェロモンを感知できないメスマウスはオスマウスを拒絶する
Impaired pheromone detection and abnormal sexual behavior in female mice deficient for ancV1R
Kondo et al., Curr Biol. 2025 Jan 6;35(1):21-35.e8.
https://doi.org/10.1016/j.cub.2024.10.077
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多くの動物種に共通するフェロモン受容体候補遺伝子ancV1Rの、フェロモン物質の関知における役割が明らかに。CRISPR-Cas9ゲノム編集によって、ancV1R遺伝子を欠損させたメスマウスは、オスマウスから逃げ回り、接触や交尾行動に対する拒絶行動を示した。Current Biology誌。
リージョナルフィッシュがシリーズCで40億円を調達
気候変動に強い魚、品種改良で開発 新興が40億円調達
日本経済新聞. 2024年12月25日
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF188CJ0Y4A211C2000000/
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