2024年11月のX(Twitter)紹介ゲノム編集論文&ニュース

株式会社セツロテックのX(旧Twitter)アカウントでは、ゲノム編集に関する論文やニュースを、弊社メンバーが独断と偏見でピックアップしてつぶやいています。弊社の提供するサービスとは直接関係ない情報も含め、幅広くお届けしております。ゲノム編集技術の社会実装を目指す大学発ベンチャーとして、皆さんの新技術への理解増進の一助になれば幸いです。ぜひ、フォローを!ここでは、2024年11月のポストで紹介した内容を再編成して掲載いたします。なお、本記事の内容は、発表された論文やニュースの内容を紹介するものであり、会社としての正式な見解では無く、担当者個人の理解によるものです。

微生物ゲノム編集におけるnon-Cas9ゲノム編集システムの利点

Emerging gene editing in industrial microbiology beyond CRISPR-Cas9
Liang et al., Trends Biotechnol. 2024 Oct 26:S0167-7799(24)00270-1.
https://doi.org/10.1016/j.tibtech.2024.09.012
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シアノバクテリアやコリネ型細菌などの”Cas9-sensitive”な産業微生物に対して、Cas12aなどのnon-Cas9ゲノム編集システムを採用することが解決策となる。Trends in Biotechnology誌。

欧州のCRISPR-Cas9特許紛争でとられた「焦土戦略」

CRISPR Nobelists surrender their own European patents
Harrison, Nat Biotechnol. 2024 Nov;42(11):1629.
https://doi.org/10.1038/s41587-024-02472-0
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ダウドナとシャルパンティエ側の2つの欧州CRISPR-Cas9特許が、彼ら自身の要請によって取り消されることになったとのこと。欧州特許庁が、明細書にPAM配列への言及がないことを指摘したことに対して、特許自体に否定的な最終判断が下る前に取り下げるらしい。Nature Biotechnology誌のニュース記事。

DNA の「文法」を学習した大規模言語モデルによるゲノム編集システムの生成

Learning the language of DNA
Theodoris et al., Science. 2024 Nov 15;386(6723):729-730.
https://doi.org/10.1126/science.adt3007
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270万個の原核生物ゲノムとファージゲノムでDNA の「文法」を学習した大規模言語モデル”Evo”が登場。マルチモーダルな生成タスクに優れており、生成した合成CRISPR-Cas分子複合体の1つであるEvoCas9-1は、in vitroで切断活性が確認された。Science誌のPerspective記事。

蚊にとっての「蚊の鳴くような声」の意味

Deafness due to loss of a TRPV channel eliminates mating behavior in Aedes aegypti males
Wang et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2024 Nov 19;121(47):e2404324121.
https://doi.org/10.1073/pnas.2404324121
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蚊の交尾では、オスはメスの羽ばたきの音に興味を持つ。CRISPR-Cas9ゲノム編集により、蚊の「耳」に相当するジョンストン器官の聴覚ニューロンで発現するtrpVa遺伝子をノックアウトすると、音に反応しなくなり、オスをメスと同じ空間に入れても交尾しなくなった。PNAS誌。

外来DNAを用いないダイズゲノム編集に初めて成功

A DNA-free and genotype-independent CRISPR/Cas9 system in soybean
Kuwabara et al., Plant Physiol. 2024 Sep 23:kiae491 (Online ahead of print).
https://doi.org/10.1038/s41467-024-51758-z
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CRISPR-Cas9システムで、ダイズアレルゲン遺伝子のひとつであるGly m Bd 30Kを標的としたゲノム編集に成功。胚軸の茎頂分裂組織に、パーティクルガンでRNP複合体を物理的に導入する。ゲノム編集個体ではGly m Bd 30Kタンパク質は検出されず。Plant Physiology誌。

ゲノム編集技術で「大きくて甘い」トマトを実現する

Tomato engineering hits the sweet spot to make big sugar-rich fruit
Liang et al., Nature. 2024 Nov;635(8039):559-560.
https://doi.org/10.1038/d41586-024-03302-8
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CRISPR-Cas9ゲノム編集で、トマトのカルシウム依存性プロテインキナーゼをコードする2つの遺伝子をダブルノックアウトし、果実の重量や収量に影響を与えることなく、グルコースとフルクトースの含量を最大30%増加させることに成功。大きくかつ甘い。Nature誌のNews&Views。

変曲点を迎える21世紀のマウス遺伝学的モデル

Twenty-first century mouse genetics is again at an inflection point
Fang & Peltz, Lab Anim (NY). 2024 Nov 26 (Online ahead of print).
https://doi.org/10.1038/s41684-024-01491-3
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遺伝子(genotype)と形質(phenotype)の関係を、実験用マウスを使って探る「マウス遺伝学」研究についての展望論文。21世紀における生物医学的形質のマウス遺伝学的モデルの解析に使われる方法の変化についてまとめている。ここでもAIが大事。Lab Animal誌。

ミツバチの「滅私奉公」の行動につながる遺伝子を同定

Dedicated developmental programing for group-supporting behaviors in eusocial honeybees
Sommer et al., Sci Adv. 2024 Nov;10(44):eadp3953.
https://doi.org/10.1126/sciadv.adp3953
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CRISPR-Cas9ゲノム編集で、ミツバチの働きバチのdsx遺伝子を両アレル変異させると、一般的な感覚運動機能には影響がなかったが、コロニー維持のための集団支援行動の割合と持続時間が減少した。バーコードを蜂の背中に付けて、行動を追跡した。Science Advances誌。

塩基編集/プライム編集によるバリアントの病原性の網羅的評価

Multimodal scanning of genetic variants with base and prime editing
Belli et al., Nat Biotechnol. 2024 Nov 12 (Online ahead of print).
https://doi.org/10.1038/s41587-024-02439-1
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CRISPR-Casシステムを利用して、ヒト細胞株で1つの遺伝子(EGFR遺伝子)を5万以上のパターンで改変して多数の細胞変異体を作り、これらの細胞の機能をテストした。癌関連領域を特定し、塩基編集でバリアントが何をもたらすかを網羅的に調べる。Nature Biotechnology誌。

イネの低温耐性を制御する遺伝子を同定

COLD6-OSM1 module senses chilling for cold tolerance via 2′,3′-cAMP signaling in rice
Luo et al., Mol Cell. 2024 Nov 7;84(21):4224-4238.e9.
https://doi.org/10.1016/j.molcel.2024.09.031
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イネの低温耐性を制御する遺伝子を同定。CRISPR-Cas9システムによるゲノム編集で細胞膜に局在する低温センサーCOLD6複合体を機能欠損させると、変異体はより強い寒冷耐性を示した。COLD6は、冷温ストレスに対する2′,3′-cAMPの蓄積を抑制している。Molecular Cell誌。

ゲノム編集オオムギの野外環境下での形質評価がスタート

ゲノム編集オオムギの野外環境下での実験計画報告書が文科省に受理されました
バイオステーション 2024年11月18日
https://bio-sta.jp/news/administration/4981/
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ゲノム編集オオムギの野外ほ場での栽培試験がスタート(実験計画書が文部科学省で受理)。CRISPR-Cas9ゲノム編集でD-Hordein遺伝子をノックアウト(252 塩基の欠失)することで、オオムギ粉生地の粘弾性を向上させた。農研機構らのチーム。

アグロバクテリウムによる形質転換効率を向上させるための点変異

Binary vector copy number engineering improves Agrobacterium-mediated transformation
Szarzanowicz et al., Nat Biotechnol. 2024 Nov 4 (Online ahead of print).
https://doi.org/10.1038/s41587-024-02462-2
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プラスミドバックボーンの複製起点に単純な点変異を入れるだけで、アグロバクテリウムを介した植物と菌類の形質転換効率が大幅に向上。プラスミドのコピー数を増やす変異の導入で、シロイヌナズナでは60-100%、油脂生産酵母では390%向上した。Nature Biotechnology誌。

lncRNAの役割をCRISPR-Cas13によるスクリーニングで探る

Transcriptome-scale RNA-targeting CRISPR screens reveal essential lncRNAs in human cells
Liang et al., Cell. 2024 Nov 11:S0092-8674(24)01203-0.
https://doi.org/10.1016/j.cell.2024.10.021
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RNAを特異的に標的とするCRISPR-Cas13システムを利用したトランスクリプトーム規模のスクリーニングによって、さまざまなヒト細胞の機能に重要なロングノンコーディングRNA(lncRNA)を778個同定した。例えば、腫瘍における発現が生存と相関するlncRNAを特定できた。Cell誌。

RNAを用いてDNAを組換える転写因子IS110ファミリー

大腸菌由来の「DNAを組換える転移因子」を発見
Nature ダイジェスト 2024年11月号
https://doi.org/10.1038/ndigest.2024.241129
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CRISPRゲノム編集による画期的な治療法が本格的に開始

ゲノム編集技術「CRISPR」を使った初の治療が始まっている
WIRED 2024年11月19日
https://wired.jp/article/irst-crispr-treatment-patients-sickle-cell/
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CRISPR-Cas9ゲノム編集によるスプライシングの制御

ゲノム編集によって遺伝子の働きを部分的に抑える新しい技術の実証実験に成功
熊本大学 2024年11月18日
https://www.kumamoto-u.ac.jp/whatsnew/sizen/20241118-2
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ダウドナさんが語る気候変動に対応するためのゲノム編集技術

「気候変動への適応に革命」ノーベル賞研究者が語ったゲノム編集農業の未来
MIT Technology Review 2024年11月22日
https://www.technologyreview.jp/s/349358/
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