2024年8月のX(Twitter)紹介ゲノム編集論文&ニュース

株式会社セツロテックのX(旧Twitter)アカウントでは、ゲノム編集に関する論文やニュースを、弊社メンバーが独断と偏見でピックアップしてつぶやいています。弊社の提供するサービスとは直接関係ない情報も含め、幅広くお届けしております。ゲノム編集技術の社会実装を目指す大学発ベンチャーとして、皆さんの新技術への理解増進の一助になれば幸いです。ぜひ、フォローを!ここでは、2024年8月のポストで紹介した内容を再編成して掲載いたします。なお、本記事の内容は、発表された論文やニュースの内容を紹介するものであり、会社としての正式な見解では無く、担当者個人の理解によるものです。

メダカの形の認識能力を制御する遺伝子

An Evolutionarily Distinct Hmgn2 Variant Influences Shape Recognition in Medaka Fish
Inoue et al., Commun Biol. 2024 Aug 23;7(1):973.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07681-w
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Y字に分かれた水槽で、一方の壁には黒い丸を、もう片方の壁には黒い三角形を貼り付けておくと、メダカは丸ゾーンより三角ゾーンを好んで滞在した。だが、CRISPR-Cas9ゲノム編集でoHmgn2遺伝子をノックアウトした変異体では、終脳の一部の領域が縮小し、その好みが失われた。Communications Biology誌。

スイスでゲノム編集オオムギの試験栽培がスタート

農作物へのゲノム編集、スイスは受け入れられるのか
スイスインフォ 2024年8月9日
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スイスでゲノム編集大麦「ゴールデン・プロミス」の試験栽培がスタート。種子形成に関わるCKX2遺伝子をCRISPR-Cas9ゲノム編集でノックアウトし、収量増加を狙う。

CRISPR-Cas13dシステムを利用した汎用性の高い魚類の不妊化技術

Sterilization of fish through adaptable gRNAs targeting dnd1 using CRISPR-Cas13d system
Nishimura et al., Aquaculture. 2024 ; 593:741269.
https://doi.org/10.1016/j.aquaculture.2024.741269
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大型で飼育が困難な産業重要魚種の精子や卵を、飼育が容易な魚を借腹(代理親)にして効率的に生産できるように、CRISPR-Cas13dゲノム編集で、代理親側の生殖細胞を完全に欠損させておく。配列共通性の高い領域を利用し、様々な魚種で使える汎用gRNAを作成。Aquaculture誌。

治療用タンパク質の「運び屋」として寄生虫を利用する

Engineering Toxoplasma gondii secretion systems for intracellular delivery of multiple large therapeutic proteins to neurons
Bracha et al., Nat Microbiol. 2024 Aug;9(8):2051-2072.
https://doi.org/10.1038/s41564-024-01750-6
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ウイルスベクターでなく脳内寄生虫を使って、治療用タンパク質をマウスの脳神経細胞に送達する手法を開発。CRISPR-Casで遺伝子操作したトキソプラズマを使うことで、血液脳関門を突破でき、ニューロン内で脳障害を治療するタンパク質を生産させた。Nature microbiology誌。

セツロテックと徳島大学の共同研究の成果の紹介

“ひよこの性別 卵の段階で見分ける方法” 徳島大学などが開発
NHK 2024年8月7日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240807/k10014540431000.html
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記事紹介ポストをリポスト。セツロテックと徳島大学の共同研究の成果を、NHKさんに取り上げていただきました!

分子構造の情報をもとに、新たなゲノム編集システムを探し出す

Structure-guided discovery of ancestral CRISPR-Cas13 ribonucleases
Yoon et al., Science. 2024 Aug 2;385(6708):538-543.
https://doi.org/10.1126/science.adq0553
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配列情報でなく分子構造の情報をもとに、相同遺伝子を探索する時代に(Structure-guided genome mining)。分子構造をガイドとするタンパク質データベース検索を用いて、CRISPR-Cas13システムの「祖先型」Cas13anを特定した。Doudnaさんチーム。Science誌。

アメリカミズアブ(BSF)の工業的利用

Diverting organic waste from landfills via insect biomanufacturing using engineered black soldier flies (Hermetia illucens)
Tepper et al., Commun Biol. 2024;7(1):862.
https://doi.org/10.1038/s42003-024-06516-8
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アメリカミズアブ(black soldier fly)の工業的利用についての展望論文。ゲノム編集などの合成生物学を用いることで、有機廃棄物を飼料や肥料に変換するだけでなく、さらに工業用酵素や脂質など高付加価値生体分子の生産に利用できるとする。Communications Biology誌。

CRISPR-Cas9スクリーニングでコブラ毒液の毒性に必要な遺伝子を同定

Molecular dissection of cobra venom highlights heparinoids as an antidote for spitting cobra envenoming
Du et al., Sci Transl Med. 2024 Jul 17;16(756):eadk4802.
https://doi.org/10.1126/scitranslmed.adk4802
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ヒト細胞全ゲノムを対象としたCRISPR-Cas9 KOスクリーニングで、コブラ毒液の細胞毒性に必要な遺伝子を同定。プロテオグリカンの生合成に関与する遺伝子であったことから、低分子ヘパリンを皮下投与すると、コブラ毒液の解毒に機能した。Science Translational Medicine誌。

やせ型糖尿病モデルハムスターを開発

Disruption of insulin receptor substrate 2 (IRS2) causes non-obese type 2 diabetes with β-cell dysfunction in the golden (Syrian) hamster
Hirose et al., Sci Rep. 2024:17450.
https://doi.org/10.1038/s41598-024-67513-9
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ハムスターのCRISPR-Cas9ゲノム編集で、疾患モデル動物を開発。ゴールデンハムスターは糖質や脂質の代謝がヒトに似るので、Irs2遺伝子をノックアウトし、非肥満型の糖尿病モデルハムスターを作製した。これはIrs2 KOマウスとは異なる特徴を持つ。Scientific Reports誌。

昼行性のラットのゲノム編集に成功

CRISPR-based genome editing of a diurnal rodent, Nile grass rat (Arvicanthis niloticus)
Xie et al., BMC Biol. 2024 Jul 2;22(1):144.
https://doi.org/10.1186/s12915-024-01943-9
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昼行性のナイルグラスラットのCRISPR-Casゲノム編集に成功。現在の前臨床試験では、マウスやラットなど、夜間に活動し日中に睡眠をとる夜行性のげっ歯類が使用されており、ヒトと同じ昼行性のモデル動物でデータを取ることには利点がある。iGONAD法を利用。BMC Biology誌。

ゲノム編集でリグニン含量を減少させたポプラ材

Genome-edited trees for high-performance engineered wood
Liu et al., Matter. 2024 Aug 12 (Online ahead of print).
https://doi.org/10.1016/j.matt.2024.07.003
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Cas9ニッカ―ゼを用いた一塩基編集でリグニン含量を減少させ、高性能の構造用木材を生産することに成功。4CL1遺伝子をノックアウトしたポプラの圧縮木材は、既存のエンジニアリングウッドに匹敵する強度を示した。化学的脱リグニン処理を必要とせず、環境に優しい。Matter誌。

教育現場のためのお手頃価格なCRISPRキット

A frugal CRISPR kit for equitable and accessible education in gene editing and synthetic biology
Collins et al., Nat Commun. 2024 Aug 3;15(1):6563.
https://doi.org/10.1038/s41467-024-50767-2
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高校の教育現場のための、お手頃価格で「質素な」CRISPRキットの開発。特別な装置を必要とせず、廃棄に困るバイオハザードが発生せず、費用対効果の高い試薬を利用し、キット1個あたりの総コストを$2.01に抑えた。科学の裾野を広げる。Nature Communications誌。

CRISPR-Cas9ゲノム編集で植物のトゲを減らす

Convergent evolution of plant prickles by repeated gene co-option over deep time
Satterlee et al., Science. 2024 Aug 2;385(6708):eado1663.
https://doi.org/10.1126/science.ado1663
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ナスやキュウリ、イネなどにおいて、収斂進化の結果、相同遺伝子がトゲの形成を制御していることを発見。ソラマメ属全体の系統解析からLOGファミリー遺伝子を同定し、いくつかの種でこれを標的にCRISPR-Cas9ゲノム編集すると、トゲが大幅に減少または消失した。Science誌。

ジャガイモ疫病菌に強いジャガイモの開発

CRISPR/Cas9 genome editing of potato StDMR6-1 results in plants less affected by different stress conditions
Karlsson et al., Hortic Res. 2024 May 6;11(7):uhae130.
https://doi.org/10.1093/hr/uhae130
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DMR6遺伝子をゲノム編集したジャガイモは、ジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)に対する抵抗性が増加した。また、干ばつや塩分などの生物的ストレス条件や他の病原菌への耐性も増加していた。生産量の減少や品質面でのトレードオフはない。Horticulture Research誌。

iPS細胞とゲノム編集技術でDup15q症候群の病態解明に前進

ゲノム編集技術を用いて自閉症スペクトラム症を生じる15番染色体重複症候群iPS細胞の染色体を改変 病態解明と創薬に役立つツールを作製
京都大学iPS細胞研究所 2024年8月21日
https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/240821-100000.html
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プレスリリース紹介ポストをリポストのみ。

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