2023年10月のX(Twitter)紹介ゲノム編集論文&ニュース

株式会社セツロテックのX(Twitter)アカウントでは、ゲノム編集に関する論文やニュースを、弊社メンバーが独断と偏見でピックアップしてつぶやいています。弊社の提供するサービスとは直接関係ない情報も含め、幅広くお届けしております。ゲノム編集技術の社会実装を目指す大学発ベンチャーとして、皆さんの新技術への理解増進の一助になれば幸いです。ぜひ、フォローを!ここでは、2023年10月のポストで紹介した内容を再編成して掲載いたします。なお、本記事の内容は、発表された論文やニュースの内容を紹介するものであり、会社としての正式な見解では無く、担当者個人の理解によるものです。

1. セツロテック研究員による論文発表のプレスリリース!

【プレスリリース】「効率的なニワトリ新品種作出」と「始原生殖細胞の可視化」を可能にするゲノム編集ニワトリの作出
徳島大学プレスリリース
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セツロテック研究員のChenさんを筆頭著者とする論文発表についてのプレスリリースです!従来より効率良くゲノム編集ニワトリを作り出す技術を開発し、gSAMURAI法と名付けました。プレスリリースでは、論文の内容を日本語でわかりやすく解説しています。ぜひ!

2. 種と種の間の隔たりをゲノム編集技術で飛び越える

SHI family transcription factors regulate an interspecific barrier Fujii et al., Nat Plants. 2023 Oct 5. (Online ahead of print)
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通常、種が異なる花粉は排除されるが、ゲノム編集によってシロイヌナズナのspri2/spri2-like遺伝子をノックアウトすると、人工授粉時に異種(ヒメアラセイトウ)の花粉の花粉管がめしべに侵入するようになった。種間のハイブリッド品種の開発が進むかも。Nature Plants誌。

3. 立体構造解析と変異体スクリーニングでより活性の高いCas12fを作製

An AsCas12f-based compact genome-editing tool derived by deep mutational scanning and structural analysis Hino et al., Cell. 2023 Oct 26;186(22):4920-4935.e23.
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Cas12ファミリーの中でも最小のサイズであるAsCas12fに変異を導入し、Cas9と匹敵するほどゲノム編集活性の高い2種類の改変型AsCas12fを作製。Cryo-EMによる立体構造解析と、培養細胞系を用いた変異体スクリーニング手法を利用。東京大学らのチーム。Cell誌。

4. チョウの翅の模様をゲノム編集技術で探る

Frizzled2 receives WntA signaling during butterfly wing pattern formation
Hanly et al., Development. 2023 Sep 15;150(18):dev201868.
https://doi.org/10.1242/dev.201868
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チョウ(ヒメアカタテハ)のゲノムにあるWnt受容体Frizzledファミリーのホモログ4つを、CRISPR/Cas9ゲノム編集してモザイク変異体を作製。WntA/Fz2のペアが、チョウの翅のカラーパターニングを指示するシグナル軸を形成していることを示した。Development誌。カバー論文。

5. ゲノム編集によって鳥インフルエンザウイルスへの部分的な耐性を獲得

Creating resistance to avian influenza infection through genome editing of the ANP32 gene familyIdoko-Akoh et al., Nat Commun. 2023 Oct 10;14(1):6136.
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ニワトリの始原生殖細胞のANP32A遺伝子に、CRISPR/Cas9を使って2つのアミノ酸変異を導入し、鳥インフルエンザウイルスに部分的な耐性を持つゲノム編集ニワトリを開発。今後は、ANP32ファミリーへの多重遺伝子編集で、より強い抵抗性の獲得へ。Nature Communications誌。

6. Fanzorヌクレアーゼはいろいろな生物に存在していた

Programmable RNA-guided DNA endonucleases are widespread in eukaryotes and their viruses
Jiang et al., Sci Adv. 2023 Sep 29;9(39):eadk0171.
https://doi.org/10.1126/sciadv.adk0171
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TnpBタンパク質の真核生物ホモログFanzorヌクレアーゼは、真菌・藻類や、それに対するウイルスにも広く存在。ヒト細胞において、ゲノム編集に応用できることも実証。未知のRNAガイドシステムの探索が進む。Science Advances誌。
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7. ブタ臓器の複数遺伝子のゲノム編集によって、異種移植後に長期間生存可能に

Design and testing of a humanized porcine donor for xenotransplantationAnand et al., Nature. 2023 Oct;622(7982):393-401.
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69個!もの遺伝子をゲノム編集したブタの腎臓内皮細胞をカニクイザルに異種移植。糖鎖抗原を除去し、移植片を健康に保つためのヒト遺伝子を追加で発現させ、ブタ内在性レトロウイルスを不活性化したところ、移植されたサルの5匹は1年以上、1匹は2年以上生きた。Nature誌。

8. 1回の遺伝子改変マウスの樹立だけで様々な表現型の解析が可能

Fast, multiplexable and efficient somatic gene deletions in adult mouse skeletal muscle fibers using AAV-CRISPR/Cas9
Thürkauf et al., Nat Commun. 2023 Sep 30;14(1):6116.
https://doi.org/10.1038/s41467-023-41769-7
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多核の筋細胞で効率よくゲノム編集するために、あらかじめCas9を筋組織特異的にノックインしたゲノム編集マウスを作製し、in vivoでのAAV注射でgRNAを送達。1系統の遺伝子改変マウスの樹立だけで、多くの遺伝子機能欠損の表現型を解析できる。Nature Communications誌。

9. バクテリオファージ側の耐CRISPR戦略

Bacteriophages suppress CRISPR–Cas immunity using RNA-based anti-CRISPRs
Camara-Wilpert et al., Nature. 2023 Nov;623(7987):601-607.
https://doi.org/10.1038/s41586-023-06612-5
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CRISPR/Casシステムは、もともとは細菌がバクテリオファージに感染するのを防ぐ免疫システム。一方、バクテリオファージ側もそれに対抗し、anti-CRISPRsシステムを進化させてきた。CRISPRに似た「デコイ」のRNA配列(solitary repeat unit)を使う。Nature誌。

10. ゲノム編集応用食品「高成長ヒラメ」厚労省に届け出

日刊水産経済新聞
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11. デジタルデータを塩基編集技術でDNAに記録する

Digital data storage on DNA tape using CRISPR base editors
Sadremomtaz et al., Nat Commun. 2023 Oct 13;14:6472.
https://doi.org/10.1038/s41467-023-42223-4
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CRISPRによる塩基編集を用いて、塩基配列を変異していない状態(0)と変異した状態(1)のかたちで、デジタルデータを「DNAテープ」に記録する。PoCとして、所属大学のロゴとこの論文のタイトルを書き込み、100%の精度での復元に成功した。Nature Communications誌。

12. 切り花を長持ちさせるゲノム編集

CRISPR/Cas9-mediated mutation of Eil1 transcription factor genes affects exogenous ethylene tolerance and early flower senescence in Campanula portenschlagiana
Holme et al., Plant Biotechnol J. 2023 Oct 12. (Online ahead of print)
https://doi.org/10.1111/pbi.14200
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オトメギキョウの切り花を長持ちさせるには、CpEil1遺伝子をノックアウトしておけばよい。ゲノム編集による機能欠損で、エチレン処理への耐性が付与され花がしぼまなくなった。Plant Biotechnology Journal誌。

13. ゲノム編集ブタ臓器移植の紹介記事

ブタの腎臓、ヒトへの移植近づく 米大がサルで2年生存
日本経済新聞
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14. 日本におけるゲノム編集食品の規制状況やリスクコミュニケーションの動向

遺伝子組換えに続いて勃興するゲノム編集食品、消費者理解への取り組みも順調
日経バイオテク
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