メールマガジン:ゲノム編集論文㉒

セツロテックでは、月に一度、最新のゲノム編集に関する情報をお届けするメールマガジンを配信しています。今回の記事では、メールマガジンの人気コーナー「最近のピックアップ論文」から厳選した内容をご紹介します。
配信号:2026年2月
1. 遺伝子が壊れた時に「代打」を探すメカニズム
転写適応(transcriptional adaptation)とは、突然変異による重要な遺伝子の機能喪失を補うために、類似の機能を果たす関連遺伝子(適応遺伝子)の転写を上方制御する遺伝的補償システムである。米ホワイトヘッド研究所のEl-Brolosyらは、ゲノムワイドCRISPRスクリーニングによって、このレジリエンス経路の鍵となるシャトルRNA結合タンパク質ILF3を特定した。ILF3は、細胞質での異常mRNA分解の際に残る小さなRNA断片(分解中間体)に結合すると、核内に移動し、これと類似する配列を持つ「代打」の遺伝子へ配列依存的にリクルートされ、転写を活性化させていた。今回報告されたILF3という伝達役の存在と、適応遺伝子の発現を活性化するオリゴヌクレオチドを特定し、かつ設計するためのフレームワークは、新たな遺伝性疾患の治療の可能性を示唆するものである。(事業開発部T)
2. 単一細胞解析が明らかにしたt(8;21)急性骨髄性白血病における年齢依存的遺伝子制御ネットワーク
本研究は、t(8;21)転座を有する急性骨髄性白血病(AML)を単一細胞RNA解析で詳細に解析し、同じ融合遺伝子を持つ腫瘍であっても、患者の年齢によって遺伝子制御ネットワーク(GRN)が異なることを示した。若年例では未分化・増殖優位の幹細胞様プログラムが強い一方、高齢例では炎症応答やストレス関連経路が顕著であった。これは単なる発現量の違いではなく、転写因子ネットワークの“再配線”として理解できる。がんは固定的な遺伝子異常の結果ではなく、宿主の年齢や環境に応じて状態が変化する動的システムである可能性を示唆しており、治療戦略の再考にもつながる知見といえる。(共創推進部U)
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