2023年8月のX(Twitter)紹介ゲノム編集論文&ニュース

株式会社セツロテックのX(Twitter)アカウントでは、ゲノム編集に関する論文やニュースを、弊社メンバーが独断と偏見でピックアップしてつぶやいています。弊社の提供するサービスとは直接関係ない情報も含め、幅広くお届けしております。ゲノム編集技術の社会実装を目指す大学発ベンチャーとして、皆さんの新技術への理解増進の一助になれば幸いです。ぜひ、フォローを!ここでは、2023年8月のポスト(ツイート)で紹介した内容を再編成して掲載いたします。なお、本記事の内容は、発表された論文やニュースの内容を紹介するものであり、会社としての正式な見解では無く、担当者個人の理解によるものです。

1. マイクロインジェクションによるワムシのゲノム編集

Highly efficient CRISPR-mediated gene editing in a rotifer
Feng et al., PLoS Biol. 2023 Jul 21;21(7):e3001888.
https://doi.org/10.1371/journal.pbio.3001888
—————————————
ワムシ(輪形動物)のゲノム編集。卵黄腺にマイクロインジェクションする。ウッズホール研究所。PLOS Biology誌。

2. 粒子の表面を抗体で修飾して造血幹細胞特異的にmRNAを届ける

In vivo hematopoietic stem cell modification by mRNA delivery
Breda et al., Science. 2023 Jul 28;381(6656):436-443.
https://doi.org/10.1126/science.ade6967
—————————————
遺伝子編集ツールを患者に直接注入し、造血幹細胞をin vivoで編集・修正することで、化学療法や放射線療法を伴わない治療法を目指す。脂質ナノ粒子LNPの表面をCD117認識抗体で修飾し、造血幹細胞特異的にmRNAを送達し、配列編集することに成功。Science誌。

3. ゼブラフィッシュにおけるシトシン塩基編集プロトコル

Precise mutagenesis in zebrafish using cytosine base editors
Rosello et al., Nat Protoc. 2023 Sep;18(9):2794-2813.
https://doi.org/10.1038/s41596-023-00854-3
—————————————
ゼブラフィッシュにおけるシトシン塩基編集の実験デザイン戦略とプロトコル。Nature Protocols誌。

4. 肌や髪の色を決めるメラニン産生関連遺伝子を網羅的に探索する

A genome-wide genetic screen uncovers determinants of human pigmentation
Bajpai et al., Science. 2023 Aug 11;381(6658):eade6289.
https://doi.org/10.1126/science.ade6289
—————————————
CRISPRスクリーニングにより、肌や髪の色を左右するメラニン産生に関連する135の新しい遺伝子を同定。光の散乱というメラニン自体の性質を指標に、フローサイトメトリーで、ゲノム編集の結果メラニンが少なくなった細胞を選別するというアイデアがポイント。Science誌。

5. k-mer法を用いたゲノム編集ジャガイモ中の外来DNA検出法を開発

Foreign DNA detection in genome-edited potatoes by high-throughput sequencing
Yasumoto et al., Sci Rep. 2023 Aug 9;13(1):12246.
https://doi.org/10.1038/s41598-023-38897-x
—————————————
論文を紹介するツイートをリツイートのみ。

6. ゲノム編集技術で、腫瘍細胞由来のDNAを検出できる細菌を作る

Engineered bacteria detect tumor DNA
Cooper et al., Science. 2023 Aug 11;381(6658):682-686.
https://doi.org/10.1126/science.adf3974
—————————————
直腸投与したアシネトバクター属の細菌を使って、癌遺伝子の関連変異を含むDNAの存在を検出。変異型のRas遺伝子を取り込んで相同組換えした場合のみ、カナマイシン耐性やGFP蛍光が発現するように設計(正常型Rasの場合はCRISPRで分解)。将来は検便でがん検査?Science誌。

7. ゲノム編集による昆虫タンパク質のアップグレード

CRISPR upgrades insect proteins for feed
Gruber et al., Nat Biotechnol. 2023 Aug;41(8):1038-1040.
https://doi.org/10.1038/s41587-023-01902-9
—————————————
ゲノム編集による昆虫タンパク質のアップグレード。イスラエルやアメリカのベンチャー企業によるアメリカミズアブ(BSF)やミールワームでの取り組みの紹介。Nature Biotechnology誌。

8. 超音波を使って、海馬の神経細胞をゲノム編集する

Focused ultrasound-mediated brain genome editing
Lao et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2023 Aug 14;120(34): e2302910120.
https://doi.org/10.1073/pnas.2302910120
—————————————
静脈中にマイクロバブルがある状態で集束超音波を当てると、その振動で血液脳関門が一過的に開通する。これにより、静脈に投与したCas9+gRNAを載せたAAVベクターを、血液脳関門を超えて脳組織に送達し、海馬の神経細胞をゲノム編集。超音波による「開けゴマ」。PNAS誌。

9. エピトープタグノックインマウスの作製プロトコル

Generation of epitope tag knock-in mice with CRISPR-Cas9 to study the function of endogenous proteins
Zhang, STAR Protoc. 2023 Aug 15;4(3):102518.
https://doi.org/10.1016/j.xpro.2023.102518
—————————————
CRISPR/Cas9ゲノム編集によるエピトープタグノックインマウスの作製プロトコル。3×Flag tagなどの挿入を例に。STAR Protocols誌。

10. 遺伝子改変酵母によるクラフトビール醸造への挑戦

Gene-Edited Yeast Is Taking Over Craft Beer
2023 Jul 18
https://www.wired.com/story/the-secret-ingredient-in-your-craft-beer-gene-edited-yeast/
—————————————
遺伝子改変酵母によるクラフトビール醸造への挑戦について、WIREDの記事。オフフレーバーであるダイアセチルの除去効率を向上させる酵母や、天然のホップの風味を高める酵母。

11. 患者由来のiPS細胞で、ジストロフィンタンパク質の発現を回復する

Dual CRISPR-Cas3 system for inducing multi-exon skipping in DMD patient-derived iPSCs
Kita et al., Stem Cell Reports. 2023 Aug 15;S2213-6711(23)00295-3.
https://doi.org/10.1016/j.stemcr.2023.07.007
—————————————
一方向に数kbレベルの欠失がおきるCRISPR-Cas3システムの特徴を活用し、ごっそり削って大規模なエクソンスキッピング→コドンの読み枠を戻す。Stem Cell Reports誌。

SHARE