2023年6月のTwitter紹介ゲノム編集論文&ニュース
株式会社セツロテックのTwitterアカウントでは、ゲノム編集に関する論文やニュースを、弊社メンバーが独断と偏見でピックアップしてつぶやいています。弊社の提供するサービスとは直接関係ない情報も含め、幅広くお届けしております。ゲノム編集技術の社会実装を目指す大学発ベンチャーとして、皆さんの新技術への理解増進の一助になれば幸いです。ぜひ、フォローを!ここでは、2023年6月のつぶやきで紹介した内容を再編成して掲載いたします。なお、本記事の内容は、発表された論文やニュースの内容を紹介するものであり、会社としての正式な見解では無く、担当者個人の理解によるものです。
Index
- 1. Pairwise社:ゲノム編集技術による植物育種の規制への提言
- 2. マイクロバイオームのゲノム編集プロジェクトが新しくスタート
- 3. 肥料が少なくてもより収量が多くなるゲノム編集イネの作出に成功
- 4. 臨床用HLAゲノム編集iPS細胞ストックの提供開始(CiRA)
- 5. セツロテックの研究チームの投稿論文がBioRxivで公開
- 6. CRISPRを発見した石野良純先生による和文レビュー
- 7. Kitaakeというモデルイネでゲノム編集いもち病耐性品種の作出に成功
- 8. CRISPRiスクリーニングでヒトとチンパンジーの必須遺伝子の違いを探る
- 9. ゲノム編集技術でサンゴ礁の構築に必要不可欠な遺伝子が明らかに
- 10. 葉緑体ゲノム上の特定の一塩基を別の種類に書き換える酵素を改良
- 11. 透明なゲノム編集イカを作出し、神経活動をライブイメージングで観察する
- 12. 真核生物のゲノムからRNAガイドを用いる遺伝子編集システムを初めて発見
1. Pairwise社:ゲノム編集技術による植物育種の規制への提言
Regulation of plants developed through new breeding techniques must ensure societal benefits
Jenkins et al., Nat Plants. 2023 May;9(5):679-684.
https://doi.org/10.1038/s41477-023-01403-2
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米国のゲノム編集ベンチャーPairwise社によるゲノム編集技術による植物育種の規制への提言。Nature Plants誌。ちなみに、Pairwise社のリリース https://pairwise.com/news/pairwise-featured-in-nature-plants の “READ ARTICLE HERE” からだと、オーサーシェアで中まで読める(はず)。Fig.2に、各国の規制の位置づけがわかりやすい。
2. マイクロバイオームのゲノム編集プロジェクトが新しくスタート
Can microbes save the planet?
Hunter et al., Nat Biotechnol. 2023 Jun;41(6):735.
https://doi.org/10.1038/s41587-023-01837-1
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Nature Biotechnology誌のEditorialで、Acious Projectへの採択が言及されている。ゲノム編集技術で微生物(叢)の力を引き出す。
3. 肥料が少なくてもより収量が多くなるゲノム編集イネの作出に成功
Fertilization controls tiller numbers via transcriptional regulation of a MAX1-like gene in rice cultivation
Cui et al., Nat Commun. 2023 Jun 8;14(1):3191.
https://doi.org/10.1038/s41467-023-38670-8
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CRISPR/Cas9ゲノム編集で、イネのOs1900遺伝子のプロモーター領域を欠失させると、通常の半分の量の施肥でも、野生型より穂数や収量性が増える系統が発見された。東京大学・京都大学・農研機構らのチーム。Nature Communications誌。
4. 臨床用HLAゲノム編集iPS細胞ストックの提供開始(CiRA)
お知らせ:臨床用HLAゲノム編集iPS細胞ストックの提供開始
https://www.cira-foundation.or.jp/2023/06/14-095500.html
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京都大学iPS細胞研究財団のツイートをリツイートのみ。
5. セツロテックの研究チームの投稿論文がBioRxivで公開
An inducible germ cell ablation chicken model for high-grade germline chimeras
bioRxiv. Chen et al. (Preprint)
https://doi.org/10.1101/2023.06.14.544953
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セツロテックの研究チームの投稿論文が、プレプリントサーバーBioRxivに公開されました。gSAMURAI法と名前をつけたニワトリのゲノム編集についての論文です。ぜひ目を通してください!
6. CRISPRを発見した石野良純先生による和文レビュー
CRISPR/Cas9を利用したゲノム編集の原理とアレルギー疾患への応用
石野良純、アレルギー 2023;72(4):343-352.
https://doi.org/10.15036/arerugi.72.343
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レビューの紹介ツイートをリツイートのみ。
7. Kitaakeというモデルイネでゲノム編集いもち病耐性品種の作出に成功
Genome editing of a rice CDP-DAG synthase confers multipathogen resistance
Sha et al., Nature. 2023 Jun;618(7967):1017-1023.
https://doi.org/10.1038/s41586-023-06205-2
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病変模倣変異(lesion mimic mutant)株から新たに発見されたrbl1遺伝子を、CRISPR/Cas9でゲノム編集して、いもち病耐性イネを作出。中国での小規模な圃場試験で実際の耐性を確認。収量は減少せず。Nature誌。
8. CRISPRiスクリーニングでヒトとチンパンジーの必須遺伝子の違いを探る
Comparative landscape of genetic dependencies in human and chimpanzee stem cells
She et al., Cell, 2023 Jul 6;186:2977-2994.
https://doi.org/10.1016/j.cell.2023.05.043
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ヒトとチンパンジーの多能性幹細胞間の必須遺伝子の違いを、CRISPRiスクリーニングで解析。細胞増殖に種特異的な影響を及ぼす75の遺伝子を同定。これらは、特に細胞周期の制御に関連した同じパスウェイにまとまっており、大脳の大きさの進化との関係を示唆。Cell誌。
9. ゲノム編集技術でサンゴ礁の構築に必要不可欠な遺伝子が明らかに
Role of the bicarbonate transporter SLC4γ in stony-coral skeleton formation and evolution
Tinoco et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2023 Jun 13;120(24):e2216144120.
https://doi.org/10.1073/pnas.2216144120
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CRISPR/Cas9ゲノム編集で、サンゴ(stony corals)がサンゴ礁構造を構築するために不可欠な遺伝子を明らかにする。重炭酸塩のトランスポーターであるSLC4γ遺伝子に変異を導入した幼生ポリプは骨格形成に欠陥があり、その程度はSLC4γ変異の頻度に比例した。PNAS誌。
10. 葉緑体ゲノム上の特定の一塩基を別の種類に書き換える酵素を改良
Characterization and development of a plastid genome base editor, ptpTALECD
Nakazato et al., Plant J. 2023 May 22.
https://doi.org/10.1111/tpj.16311
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下記プレスリリースの紹介ツイートをリツイートのみ。
東京大学
https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20230626-2.html
11. 透明なゲノム編集イカを作出し、神経活動をライブイメージングで観察する
Creation of an albino squid line by CRISPR-Cas9 and its application for in vivo functional imaging of neural activity
Ahuja et al., Curr Biol. 2023 Jun 14;S0960-9822(23)00739-X.
https://doi.org/10.1016/j.cub.2023.05.066
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CRISPR/Cas9ゲノム編集で、オモクローム色素のないアルビノのミミイカを作成して、二光子顕微鏡を用いた神経活動のライブイメージングに活用する。すべてのFigureが、可愛いイカの画像でいっぱい。Current Biology誌。
12. 真核生物のゲノムからRNAガイドを用いる遺伝子編集システムを初めて発見
Fanzor is a eukaryotic programmable RNA-guided endonuclease
Saito et al., Nature 2023 Jun 28. (Online ahead of print)
https://doi.org/10.1038/s41586-023-06356-2
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原核生物で発見されたCRISPR/Cas9と似たシステムを、真核生物でも初めて発見(ツボカビ、藻類、ホンビノスガイなどに存在)。ωRNAによってゲノム上の特定の部位を標的とするDNA切断酵素Fanzorをリプログラムすることで、ヒト細胞のゲノム編集ができることを示した。Feng Zhangらのチーム。Nature誌。