メールマガジン:ゲノム編集論文⑧

セツロテックでは、月に一度、最新のゲノム編集に関する情報をお届けするメールマガジンを配信しています。今回の記事では、メールマガジンの人気コーナー「最近のピックアップ論文」から厳選した内容をご紹介します。

配信号:2024年12月

魚の胚が自らの「誕生日」を決める方法

A transient neurohormonal circuit controls hatching in fish
Gajbhiye et al., Science. 2024 Dec 6;386(6726):1173-1178
https://www.science.org/doi/10.1126/science.ado8929
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卵から産まれる魚では、多くの場合、誕生したばかりの幼生の生存に有利な環境条件と一致するように、孵化のタイミングが調整される。しかし、その時期がどのような神経メカニズムで決定されているかはよくわかっていなかった。エルサレム・ヘブライ大学のGajbhiyeらは、CRISPR-Cas9システムによるゲノム編集で、ゼブラフィッシュとメダカの甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(Trh)をコードする遺伝子をノックアウトし、Trhが硬骨魚類の孵化を誘発する神経内分泌因子であることを示した。この神経回路は孵化直前に形成される一時的なものであり、視床下部から血流中に放出されたTrhは、孵化腺からの卵膜(柔毛膜)の溶解に必要なプロテアーゼの放出を誘発し、幼生が適切なタイミングで卵の中から脱出できるようにしていた。自分の「殻」を破るには、一歩を踏み出す勇気と神経ホルモンが必要。(研究開発部T)

マウス2細胞期胚でのEPによるゲノム編集

Efficient genome editing of two-cell mouse embryos
via modified CRISPR/Cas electroporation
Sakurai et al., Sci Rep. 2024 Dec 5;14(1):30347
https://www.nature.com/articles/s41598-024-81198-0
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マウスの2細胞期胚は凍結保存に適しており、世界中の多くの研究機関でストックされている。これらの研究資源を有効活用するため、信州大学のSakuraiらは、マウス2細胞期胚でのエレクトロポレーションによるゲノム編集マウス作製法を開発した。ポイントは、2細胞期の2つの割球の接触面を、電極に対して垂直になるように胚の向きをそろえること。この状態でエレクトロポレーションを行うことで、割球融合によって4倍体となって発育不良になることを防ぎ、効率的なCRISPR-Casゲノム編集が実施できた。興味深いことに、受精卵(1細胞期)と2細胞期胚のどちらのタイミングでエレクトロポレーションをしても、ゲノム編集後の胚は同程度のモザイク性を示した。また、受精卵よりも2細胞期胚でエレクトロポレーションを実施したほうが、1.3 kb以内のDNA配列に対して高いノックイン効率を示す傾向にあった。(研究開発部T)

 

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