メールマガジン:ゲノム編集論文⑬

セツロテックでは、月に一度、最新のゲノム編集に関する情報をお届けするメールマガジンを配信しています。今回の記事では、メールマガジンの人気コーナー「最近のピックアップ論文」から厳選した内容をご紹介します。
配信号:2025年5月
認知症の病態をより再現できるモデルマウスの作製に成功
Human MAPT knockin mouse models of frontotemporal dementia for the neurodegenerative research community
Morito et al., Cell Rep Methods. 2025 Apr 21;5(4):101024.
https://www.cell.com/cell-reports-methods/fulltext/S2667-2375(25)00060-8
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セツロテックで取り扱っている全自動マウス/ラット行動試験システム「IntelliCage」を使った研究事例。患者の脳内にタウタンパク質が蓄積して神経変性が起こる前頭側頭型認知症には根本的な治療方法がないが、これまで疾患型遺伝子の過剰発現によるモデルマウスしか存在せず、研究のためにより正確に病態を反映するモデルマウスが求められていた。理化学研究所のMoritoらは、シトシンベースエディターでタウ遺伝子に病原性変異を導入し、過剰発現でないかたちで病態を再現できる、新たなモデルマウスの作製に成功した。脳のタウ病理が再現できたこれらのマウスの行動解析には、人間の影響による誤差を極力まで減らすことが可能な全自動型の行動試験システム「IntelliCage」を用い、注意力低下など前頭側頭型認知症患者に類似した行動異常が観察されることを確認できた。より短期間での治療薬の評価が可能に。(事業開発部T)
CRISPRで生細胞におけるRNA分子の空間的局在を制御する
Programmable control of spatial transcriptome in live cells and neurons
Han et al., Nature. 2025 May 21 (Online ahead of print).
https://www.nature.com/articles/s41586-025-09020-z
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細胞内でのRNAの空間的局在は、特にニューロンのような大きな極性細胞では極めて重要な役割を果たしており、例えば、筋萎縮性側索硬化症はmRNAの細胞内輸送システムの機能障害によるものである。空間的なトランスクリプトームの機能的意義を解明するために、米スタンフォード大学のHanらは、不活性型のdCas13を用いて、生細胞における内在性RNAの局在をプログラム制御するシステム「CRISPR-TO」を開発した。gRNAによって標的RNA分子と特異的に結合できるdCas13は、細胞内コンパートメント特異的なシグナルまたはモータータンパク質と連結されており、誘導剤(植物ホルモンのABAを採用)依存的な二量体化によって、dCas13がまるで郵便配達員のようにニューロン内の特定の場所にRNAを輸送する。ニューロン内の損傷個所にRNAを輸送し、修復・再生するような治療が可能になるかも。(事業開発部T)
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