メールマガジン:ゲノム編集論文⑩

セツロテックでは、月に一度、最新のゲノム編集に関する情報をお届けするメールマガジンを配信しています。今回の記事では、メールマガジンの人気コーナー「最近のピックアップ論文」から厳選した内容をご紹介します。
配信号:2025年2月
1. 「はらぺこ」の肥満細胞を作ってがん細胞を兵糧攻めする
Implantation of engineered adipocytes suppresses tumor progression in cancer models
Nguyen et al., Nat Biotechnol. 2025 Feb 4 (Online ahead of print)
https://www.nature.com/articles/s41587-024-02551-2
—————————————
CRISPR activation(CRISPRa)は、切断活性を欠失させた不活性型Cas9に転写活性化因子を融合させ、gRNAが認識する部位にある特定の遺伝子発現を活性化する手法である。カリフォルニア大学サンフランシスコ校のNguyenらは、寒冷な条件でマウスのがんが抑制された(寒さによってカロリーを消費して熱産生を行う褐色脂肪細胞が活性化し、がん細胞が飢餓状態になった)現象に注目し、遺伝子改変した脂肪細胞でがん細胞を「兵糧攻め」することを試みた。褐色脂肪細胞で活発に発現しているUCP1遺伝子をCRISPRで上方制御した白色脂肪細胞では代謝能力が増大しており、この細胞でできた脂肪オルガノイドを膵臓がんや乳がんのモデルマウスの腫瘍の近くに移植すると、がんの進行と増殖が大幅に抑制された。「はらべこあおむし」よろしく、際限なく食べ続ける。(事業開発部T)
2. プライム編集でコエンザイムQ10を合成できるコメやコムギを作出
Design of CoQ10 crops based on evolutionary history
Xu et al., Cell. 2025 Feb 11:S0092-8674(25)00087-X.
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(25)00087-X
—————————————
コエンザイムQ(CoQ)は、ミトコンドリア呼吸によるエネルギー産生に不可欠なビタミン様物質であり、生物種によって合成するイソプレノイド側鎖の長さが異なる。コメなどCoQ9型の主食植物においてCoQ10生産を工学的に実現することを目指し、上海辰山植物園のXuらは、植物の進化の歴史にその答えを求めた。1000種以上のホモログ解析から、複数の被子植物系統で独立して起こった、イソプレノイド側鎖合成酵素Coq1の触媒ポケットにおける重要なアミノ酸変化を同定し、これをコメとコムギにおいて多重プライム編集で再現した。イネでは、Coq1遺伝子でK166D/M240L/A243V/I255M/S256Tの5重置換を行い、T0世代でCoQの約70%がCoQ10として蓄積された系統が得られた。系統解析によれば、CoQ10の生産は顕花植物の祖先の状態を表しており、先祖がえりを果たしたことになる。(事業開発部T)
毎月1回配信しているメールマガジン「セツロテック通信」では、上記のような最新のゲノム編集論文の紹介(1~2報程度)のほか、ゲノム編集技術を学べるWebセミナーの情報や、お得なキャンペーンの情報など、毎号盛りだくさんの内容をお伝えします。ぜひ下記よりご登録ください!

