2025年11月のX紹介精密育種・ゲノム編集論文&ニュース

株式会社セツロテックのX(旧Twitter)アカウントでは、精密育種やゲノム編集技術に関する論文やニュースを、弊社メンバーが独断と偏見でピックアップしてつぶやいています。弊社の提供するサービスとは直接関係ない情報も含め、幅広くお届けしております。精密育種技術の社会実装を目指す大学発ベンチャーとして、皆さんの新技術への理解増進の一助になれば幸いです。ぜひ、フォローを!ここでは、2025年11月のポストで紹介した内容を再編成して掲載いたします。なお、本記事の内容は、発表された論文やニュースの内容を紹介するものであり、会社としての正式な見解では無く、担当者個人の理解によるものです。

ホッキョククジラはまめにDNAを修復しているから長生きできる

Evidence for improved DNA repair in long-lived bowhead whale Firsanov et al., Nature. 2025 Oct 29 (Online ahead of print).
200年以上長生きするホッキョククジラの細胞は、DNA二本鎖切断の修復能力と正確性が高かった。ホッキョククジラの細胞で高発現であったCIRBPをヒト細胞で過剰発現させたところ、DNA修復能力が向上した。イヌピアットが捕まえたクジラから組織サンプルをもらう。Nature誌。

ナンセンス変異を「読み飛ばして」解決する戦略

Stop the nonsense: genome editing creates potentially therapeutic transfer RNAs Keeling et al., Nature. 2025 Dec;648(8092):43-45.
プライム編集で、内因性tRNAを恒久的に改変型tRNA(sup-tRNA)に変換し、ナンセンス変異によって生じた未成熟終止コドンをリードスルーさせる「PERT」を開発。疾患非依存的な救済戦略であり、さまざまな病気の治療薬となる可能性がある。Nature誌のNews&Views記事。

CRISPR–Casシステムの進化的分類についての最新レビュー論文

An updated evolutionary classification of CRISPR–Cas systems including rare variants Makarova et al., Nat Microbiol. 2025 Dec;10(12):3346-3361.
最新のCRISPR–Casシステムの進化的分類。著者陣が豪華。珍しいバリアントまで含めると、2つのクラス、7つのタイプ、46のサブタイプに分かれる。タイプVIIが新たに発見されるなど、2020年調査時の6つのタイプ、33のサブタイプから大幅に増加。Nature Microbiology誌。

世界を変える発見は基礎研究から生まれている

7 basic science discoveries that changed the world Marshall, Nature. 2025 Oct;646(8087):1040-1043.
第2次トランプ政権下の米国で進むように、基礎科学の研究費を削減すべきではない理由。基礎研究から生まれ、世界を変えた数多くの発見の一例として、フランシスコ・モヒカの古細菌における「CRISPR」の発見(機能解明)が紹介されている。Nature誌のNEWS FEATURE記事。

豚熱ウイルスの感染に耐性を持つゲノム編集ブタ

DNAJC14 gene-edited pigs are resistant to classical pestiviruses Crooke et al., Trends Biotechnol. 2025 Oct 22;S0167-7799(25)00365-8.
CRISPR-CasシステムによってDNAJC14遺伝子をノックアウトしたブタは、豚熱ウイルス(CSFV)の感染に耐性を持つ。ブタ細胞内でウイルスが増殖するのを防ぎ、CSFVによるin vivo感染実験ではノックアウトブタは感染に伴う症状を示さなかった。Trends in Biotechnology誌。

ブタ腎臓のヒト脳死患者への異種移植の症例報告

Pig-organ transplants are often rejected – researchers find a way to stop it Fieldhouse, Nature. 2025 Nov 13 (Online ahead of print).
α-Galノックアウトブタ腎臓のヒト脳死患者への異種移植論文を紹介するNature誌のニュース記事。米国57歳男性のレシピエントの体内で61日間生存した症例をモニタリング&マルチオミクス解析。ブタ胸腺を腎臓と一緒に移植したことが功を奏した可能性を指摘する。

1回の点滴だけでLDLコレステロール値を半減させる①

Phase 1 Trial of CRISPR-Cas9 Gene Editing Targeting ANGPTL3 Laffin et al., N Engl J Med. 2025 Nov 27;393(21):2119-2130.
CRISPR-Cas9を用いた遺伝子治療CTX310の第1相臨床試験において、治療後2週間でトリグリセリド値とLDLコレステロール値が半減。遺伝性の重症患者15名を対象に、単回投与(2時間の点滴1回だけ)で肝臓のANGPTL3遺伝子を編集した。The New England Journal of Medicine誌。

1回の点滴だけでLDLコレステロール値を半減させる②

CRISPR vs cholesterol: can gene editing prevent heart disease? Ledford, Nature. 2025 Nov;647(8091):832-833.
7の論文を紹介するNature誌のニュース記事。

3つあると不具合がでるのはどの遺伝子?

Myocardial reprogramming by HMGN1 underlies heart defects in trisomy 21 Ranade et al., Nature. 2025 Nov;647(8091):979-987.
21番染色体のトリソミーはどの遺伝子に悪影響を及ぼしているのか?21番染色体上の遺伝子66個に対するCRISPRa転写活性化によって、HMGN1が過剰に存在すると(トリソミーの場合のように)、ヒトAVC心筋細胞が心室心筋細胞状態へ変化することを発見した。Nature誌。

生体内でHDRテンプレートを生成させる遺伝子エディター

Discovery and engineering of retrons for precise genome editing Buffington et al., Nat Biotechnol. 2025 Oct 23 (Online ahead of print).
哺乳類細胞および脊椎動物における高効率なレトロンベースの遺伝子エディターを開発。メタゲノムソースから同定した、哺乳類細胞中で活性の高いレトロン逆転写酵素をCasタンパク質と融合させることで、生体内でHDRテンプレートを生成させる。Nature Biotechnology誌。

スジアオノリのノックインゲノム編集に成功

Stable transgene expression and CRISPR-mediated knock-in system of a bacteria-derived antibiotic selection gene in the green alga Ulva prolifera Qin et al., BMC Plant Biol. 2025 Oct 6;25(1):1323.
北海道大学らのチームが、食用海藻スジアオノリで、CRISPR-Cas9システムを用いたノックインゲノム編集手法を確立。内因性の標的遺伝子座へ、選択マーカーとなるaph7”カセットを正確に挿入することに成功した。研究と産業利用の幅を大きく広げる。BMC Plant Biology誌。

組織培養のフェーズを省略できる遺伝子編集シュート生産法

A synthetic transcription cascade enables direct in planta shoot regeneration for transgenesis and gene editing in multiple plants Kshetry et al., Mol Plant. 2025 Dec 1;18(12):2066-2081.
植物本来の再生能力を活用し、遺伝子編集されたシュートの生産を加速。WIND1遺伝子などをアグロバクテリウムに挿入し、剪定した植物の傷口に塗布することで、新しい芽を成長させた。組織培養が不要、もしくはその期間を短縮でき、精密育種を加速させる。Molecular Plants誌。

代替肉の原料となるゲノム編集真菌

Dual enhancement of mycoprotein nutrition and sustainability via CRISPR-mediated metabolic engineering of Fusarium venenatum Wu et al., Trends Biotechnol. 2025 Nov 19:S0167-7799(25)00404-4.
代替肉の原料(マイコプロテイン)となる真菌Fusarium venenatumを、CRISPR-Casシステムを用いた精密育種技術で改良。代謝フラックスとキチン合成を標的とし、①細胞壁を薄くし食べた時に消化しやすく、②タンパク質生産効率を改善できた。Trends in Biotechnology誌。

微生物群集による火星のテラフォーミングは可能か?

The role of extremophile microbiomes in terraforming Mars Coleine et al., Commun Biol. 2025 Nov 17;8(1):1588.
微生物群集による火星のテラフォーミングは可能か?Communications Biology誌のレビュー論文。持続可能な生命維持生態系へするための”Synthetic biology and bioengineering for Mars”として、CRISPR-Cas技術も紹介されている。

迅速・簡便・正確なPAM決定手法

PAM-readID is a rapid, simple, and accurate PAM determination method for CRISPR-Cas enzymes in mammalian cells Wang et al., Commun Biol. 2025 Nov 18;8(1):1601.
新規CRISPR-Casヌクレアーゼを同定もしくは開発した際には、PAM認識プロファイルを明らかにする必要がある。迅速、簡便、かつ正確な、ほ乳類細胞におけるPAM決定手法「PAM-readID」を開発。Communications Biology誌。

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