メールマガジン:ゲノム編集論文⑲

セツロテックでは、月に一度、最新のゲノム編集に関する情報をお届けするメールマガジンを配信しています。今回の記事では、メールマガジンの人気コーナー「最近のピックアップ論文」から厳選した内容をご紹介します。

配信号:2025年11月

1. ホッキョククジラはまめにDNAを修復しているから長生きできる

Evidence for improved DNA repair in long-lived bowhead whale Firsanov et al., Nature. 2025 Oct 29 (Online ahead of print).
秦の始皇帝が不老不死の仙薬を求めて徐福を辺境の地に派遣したように、長生きの秘訣を探るには希少なサンプルを得ることが必要である。米ロチェスター大学のFirsanovらは、アラスカ北部のイヌピアットに捕鯨枠が割り当てられている、200年以上長生きするホッキョククジラに注目した。道路がないので宅配便でなく足を運んで組織サンプルを回収した筆者らは、ホッキョククジラの細胞はヒト線維芽細胞よりも少ない変異でがん細胞化するにも関わらず、DNA二本鎖切断の修復能力と正確性が高いために変異の発生率が低いことを発見した。ホッキョククジラの線維芽細胞で高発現であった低温誘導性RNA結合タンパク質CIRBPをヒト細胞で過剰発現させたところ、非相同末端結合修復と相同組換え修復の両方を促進し、DNA修復能力が向上した。強化されたDNA修復機構がクジラの長寿に寄与しているのかも。(事業開発部T)

2. 非分裂ヒト細胞におけるCRISPR修復経路の特性と編集制御

Ramadoss, G.N., Namaganda, S.J., Kumar, M.M. et al. Characterizing and controlling CRISPR repair outcomes in nondividing human cells. Nat Commun 16, 9883 (2025).
CRISPR編集の基礎は、分裂可能な細胞を前提にした知見がほとんどだ。しかし、実際に治療対象になるのはニューロンのような非分裂細胞であることが多い。今回の研究は、この“前提のズレ”に正面から向き合っている。iPS細胞とiPS由来ニューロンを比較すると、ニューロンでは編集が極端に遅く、修復に使われる遺伝子セットもかなり違っていた。特に、分裂しないはずのニューロンが、S期関連遺伝子を大きく誘導していた点が印象的だ。これは、修復に必要な材料を揃えるために、複製系の一部だけを限定的に呼び出している状態と理解できる。この性質を利用し、RRM2阻害や修復因子のノックダウンをCas9と同時に入れると、インデル効率やパターンを制御できたという。非分裂細胞でのゲノム編集を考えるうえで、基礎と応用の両側面で示唆の多い内容だ。(共創推進部U)

 

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