オフターゲット

ゲノム編集におけるオフターゲット効果とは、目的とは異なるDNA領域を切断または編集してしまうことを指します。これにより、意図しない遺伝子変異が生じ、研究結果の正確性や安全性に影響を与える可能性があります。ここでは、CRISPR-Casシステムにおけるオフターゲット効果について説明します。

オフターゲット効果の原因

  1. ガイドRNAの特異性: gRNAの設計が完璧でない場合、その20塩基の配列が目的のターゲットサイトと類似の他のゲノム領域とも部分的に一致することがあります。特に、1~2塩基のミスマッチがあってもgRNAが結合する可能性があるため、これがオフターゲット効果を引き起こします。
  2. 複雑なゲノム環境: ヒトゲノムのように複雑で大きなゲノムを持つ生物では、類似した配列が多数存在するため、オフターゲット効果のリスクが高まります。

オフターゲット効果の影響

  1. 遺伝子編集の精度低下: 標的領域以外でのDNA切断は、研究データの解釈を複雑にし、ゲノム編集の結果の予測可能性と再現性を低下させます。
  2. 安全性への懸念: 遺伝子治療目的でのCRISPR/Casの利用では、オフターゲット効果が重大な安全性問題を引き起こす可能性があります。間違った遺伝子が編集されることで、新たな病気が引き起こされることもあり得ます。

オフターゲット効果の軽減策

  1. gRNAの最適化: ガイドRNAの設計を改良し、より高い特異性を持つようにすることで、オフターゲット効果を最小限に抑えることができます。これには、コンピューター支援設計ツールが活用されます。
  2. 改良型Casタンパク質の使用: 一般的なCasよりも特異性の高い変異体の開発が進められています。これらは、ミスマッチをより厳格に識別する能力を持ち、オフターゲット効果を減少させます。例えばeSpCas9は、通常のCas9 (SpCas9) と比べてオフターゲット効果が減少することが報告されています。
  3. 検証手法の強化: ゲノム編集細胞やゲノム編集生物の作出では、目的外のゲノム編集がないものの選別が重要です。これには、PCRや次世代シークエンス解析などが行われます。

CRISPR/Cas、TALEN、ZFN等のゲノム編集技術の精度と安全性を向上させるために、オフターゲット効果の制御と軽減は重要な課題です。これらの取り組みにより、遺伝子編集技術の臨床応用が現実のものとなりつつあります。

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