非相同性末端結合
非相同性末端結合(NHEJ)は、DNA二重鎖切断(DSB)の修復に関与する主要なDNA修復メカニズムの一つです。このプロセスは、破損したDNAの末端を直接結合させることにより、DNAの構造的完整性を回復させます。
NHEJの基本概念
- 直接結合: NHEJは、相同組換え修復(HR)とは異なり、姉妹染色分体の存在を必要とせず、DNA末端を直接繋ぎ合わせます。
- 細胞周期依存性: すべての細胞周期で機能し、特にG1期でのDSB修復に重要な役割を果たします。
NHEJにおける変異の可能性
- DNA末端の接合過程では、末端の配列に小さな変異が生じることがあります。これは、遺伝情報の一部が失われたり、間違った配列が挿入されることによります。
NHEJの応用
- V(D)J組換え: 免疫系における抗体遺伝子の多様性を生成する重要な機構。NHEJは、V(D)J組換えによって生じるDSBの修復に不可欠です。
- クラススイッチ組換え: 抗体が異なるクラスまたはサブクラスに変更されるプロセス。ここでもNHEJが重要な役割を果たします。
NHEJの経路の分類
- 典型的NHEJ (C-NHEJ): 最も一般的な修復経路で、Ku70/Ku80複合体、DNA-PKcs、XRCC4、LIG4などのタンパク質が関与します。
- 代替的NHEJ (A-EJ または B-NHEJ、MMEJ): C-NHEJが利用不可能な場合に作動する経路で、DNA末端のマイクロホモロジーを利用して結合します。Parp1、Lig3などのタンパク質が関与することが知られています。
NHEJの重要性
NHEJは、細胞がDNA損傷に迅速に対応し、遺伝的情報を保持するための重要な機構です。しかし、その過程で生じる変異は、遺伝的多様性の源泉となる一方で、突然変異やがんの原因となるリスクもあります。そのため、NHEJの調節機構の理解は、がん治療や遺伝子療法の分野での応用につながる重要な研究対象となっています。