マイクロインジェクション

マイクロインジェクションは、微小なガラス管(マイクロピペット)を用いて、DNA、RNA、タンパク質などの物質を直接細胞や細胞核内に注入する技術です。また、反対に、細胞の核などを除去することもできます。生命科学の様々な分野で利用されています。

マイクロインジェクションの基本プロセス

  1. 装置と操作: マイクロインジェクションは、顕微操作装置(マイクロマニピュレータ)と高解像度顕微鏡を使用して行われます。極細のガラス管(マイクロピペット)を用いて細胞膜を突き破って細胞内に挿入し、目的とする物質を注入します。
  2. ガラス管の製造: ガラス管は、先端の外径が1~2μmになるように細く引き伸ばされています。これにより、細胞に最小限の損傷を与えながら物質を注入することが可能になります。

応用分野

  1. 遺伝子導入: 遺伝子の導入や遺伝子編集技術(例:CRISPR-Cas9)の実験に使用されます。特定の遺伝子を動物の卵細胞や胚に直接注入し、遺伝子組換え動物を作出することが可能です。
  2. 細胞生物学: タンパク質、siRNA、特定の小分子など、細胞内での分子の局在や機能を研究するために利用されます。

利点

  1. 高い制御性と精度: マイクロインジェクションにより、非常に微量な量の物質を特定の細胞や細胞内部の位置に注入することができます。
  2. 発現効率: 物質を直接細胞内に注入するため、高い発現効率や即時的な効果が期待できます。

課題

  1. 技術的要求: 微細な操作が必要なため熟練した技術が必要です。特別な訓練を受けた研究者によってのみ実行可能です。
  2. スループットの限界: 一度に処理できる細胞数に限りがあり、大量のサンプルを扱う実験には適していません。
  3. 細胞への損傷: 細胞膜を物理的に突き破るため、細胞に損傷を与える可能性があります。

まとめ

マイクロインジェクションは、生命科学研究において非常に有効な技術です。その高い精度と応用性により、遺伝子の機能解析、遺伝子組換え動物の作出、遺伝子治療の研究など研究から臨床まで幅広く活用され生命科学の多くの分野で貴重な成果をもたらしています。しかし、技術的な難易度と細胞への影響を考慮する必要があります。

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