flox

“flox”は、特定の遺伝子領域をCreリコンビナーゼの標的配列であるloxPサイトで挟み込むことによって、その遺伝子の削除や再配置を可能にするゲノム編集技術に関連する用語です。この技術は、特にマウスモデルの作成において広く用いられており、疾患研究や遺伝子の機能解析に不可欠なツールとなっています。

floxマウスの原理

  1. loxPサイト: loxP(Locus of X-over P1)は、34塩基対のDNA配列で、Creリコンビナーゼによる特異的な組換え反応の標的となります。
  2. Creリコンビナーゼ: Creは、バクテリオファージP1から発見されたリコンビナーゼで、loxPサイト間でのDNAの切断と再結合を触媒します。

floxマウスの作成

  1. 遺伝子のフロキシング: 研究者は、特定の遺伝子領域の両端にloxPサイトを挿入し、「フロキシング(floxed)」します。これにより、その遺伝子領域はCreリコンビナーゼによる削除が可能になります。
  2. 遺伝子削除: Creリコンビナーゼを発現させることで、フロキシングされた遺伝子領域は特異的に削除されます。Creリコンビナーゼの発現は、特定の組織や発達段階で誘導することができるため、遺伝子の削除を時間的、空間的に制御することが可能です。

floxマウスの応用

  1. 機能的遺伝子解析: floxマウスは、特定の遺伝子が生物の発達や病態にどのように関与しているかを解析するために使用されます。
  2. 疾患モデルの作成: 特定の疾患に関連する遺伝子をフロキシングし、その遺伝子の機能を失わせることで、疾患のモデルを作成し、新たな治療法の開発に貢献します。
  3. 遺伝子療法の研究: floxマウスは、遺伝子療法の研究にも利用され、特定の疾患遺伝子の効果的な削除戦略を開発するためのプラットフォームとなります。

floxマウスは、遺伝子機能の正確な解析や疾患メカニズムの理解、治療法の開発に不可欠なゲノム編集技術の応用例です。この技術により、遺伝子の削除を特定の組織や発達段階に限定することができ、より精密な生物学的実験が可能になります。

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