Cre-loxP
Cre-loxPシステムは、遺伝子工学の分野で広く利用されている有用なツールです。この技術を利用することで、特定のDNA領域の精密な削除、挿入、または反転が可能となります。
Cre-loxPシステムの基本要素
- loxPサイト: loxP(locus of X-over P1)サイトは、34塩基対の特定のDNA配列で、Cre酵素の作用対象となります。この配列は、Cre酵素による特異的な組換え反応の標的となります。
- Cre酵素: Cre(Causes recombination)酵素は、バクテリオファージP1から発見された組換え酵素です。この酵素は、loxPサイト間でDNAの組換えを触媒し、特定のDNA断片の切り出しや挿入、反転を行います。
Cre-loxPシステムの作用機構
- DNAの切り出し: 2つのloxPサイトが同じ方向に配向している場合、Cre酵素はこれらの間にあるDNA領域を切り出します。このプロセスは、特定の遺伝子の削除や機能の無効化に利用されます。
- DNAの反転: 2つのloxPサイトが反対方向に配向している場合、Cre酵素はこれらの間にあるDNA領域を反転させます。これにより、遺伝子の発現パターンを変更することができます。
- DNAの転座: ゲノムの異なる場所に同じ方向に向いたloxPサイトを対にすると転座することも可能です。
Cre-loxPシステムの応用
- 遺伝子の条件付きノックアウト: Cre-loxPシステムを利用して、特定の細胞型や組織、発達段階でのみ遺伝子を削除することが可能です。これにより、遺伝子の機能と生物学的役割を研究することができます。
- 遺伝子療法: 特定の遺伝疾患の治療に向けて、病気の原因となる遺伝子をCre-loxPシステムを用いて特異的に削除または修正するアプローチが研究されています。
- Creマウスの作成: Cre-loxPシステムを活用するためには、Creマウスが必須である。特定の遺伝子の機能を研究するために、動物のゲノムからその遺伝子を削除したり、新たな遺伝子を挿入したりすることができます。
Cre-loxPシステムは、マウスの特定組織または細胞で発現させることが可能となりその精度と柔軟性から、遺伝子工学と生物医学研究において非常に価値の高い技術です。この技術を通じて、生命科学の多くの分野で革新的な発見がなされています。