BALB/c
BALB/c(Bagg’s Albino c/c)は、アルビノのハツカネズミ(マウス)の近交系であり、実験動物として非常に広く使用されています。この系統は多くの研究分野で標準的なモデル生物として用いられており、その特徴と利点から生物医学研究において不可欠な存在となっています。
BALB/cマウスの特徴
- アルビノ系統: BALB/cマウスは、白色の毛色を持つアルビノ系統で、視覚的に識別しやすい特徴を持っています。
- 近交系: 近交系とは、20世代以上にわたって兄妹交配を繰り返した系統のことで、BALB/cマウスもこの方法で作出されました。これにより、遺伝的背景が均一であるため、実験結果の再現性が高くなります。
利用される研究分野
- 免疫学: C57BL/6マウスでは、Th1免疫応答とIFNγの発生が支配的であるが、BALB/cマウスはTh 2の免疫応答を誘発しやすい。したがって、BALB/cマウスは免疫学研究で広く利用されており、特に抗体生成、感染症、アレルギー、自己免疫疾患のモデルとして使用されます。
- がん研究: 乳がん、白血病、リンパ腫などのがん研究においても頻繁に用いられ、腫瘍の形成と治療法の評価に重要なデータを提供します。
- 薬理学と毒性学: 新薬の開発や毒性試験において、BALB/cマウスは標準的な試験モデルとして用いられ、その結果は人間への適用における予測に役立ちます。
亜系の多様性
- 亜系の作出: BALB/cマウスからは、特定の研究ニーズに応じていくつかの亜系が作出されています(BALB/cByなど)。これにより、特定の遺伝的背景や特性を持つマウスが得られ、より細かい研究が可能になります。
- 世界的な分布: BALB/cマウスは世界中の研究機関で使用されており、その遺伝的特徴が均一であることから、異なる研究施設間でのデータ比較が容易です。
科学的意義
- 標準化: 遺伝的に均一なBALB/cマウスは、標準化された実験条件下での再現性の高いデータを提供し、科学的研究の信頼性を高めます。
- 歴史的な利用: BALB/cマウスは長年にわたり多くの研究に使用されてきたため、大量の背景データと文献が蓄積されており、新しい研究の基盤として非常に有用です。
研究と応用
- 疾患モデル: BALB/cマウスは、ヒトの疾患モデルとして非常に有用であり、遺伝的にヒトに似た病態を再現することで、治療法の開発や疾患メカニズムの解明に貢献しています。
- 教育と訓練: 多くの教育機関で、実験技術の訓練や基礎研究の教育にBALB/cマウスが使用されており、次世代の科学者の育成に役立っています。
BALB/cマウスは、その多用途性と信頼性により、生物医学研究における重要なリソースとしての地位を確立しています。これにより、科学の進展と新しい治療法の開発が促進され、健康と医療に大きな貢献をしています。