BALB/c nu/nu

BALB/c nu/nuマウスは、免疫不全モデルとして広く利用されるヌードマウス(nude mouse)の一種で、近交系BALB/cに特有のnu(nude)遺伝子が導入されています。この遺伝子は、T細胞の成熟に必要な胸腺の発達障害を引き起こすため、BALB/c nu/nuマウスは重要な実験動物として、がん研究、免疫学、感染症の研究などで活用されています。

BALB/c nu/nuマウスの特徴

  1. 免疫不全の性質: nu遺伝子の導入により、BALB/c nu/nuマウスは胸腺の発達が障害され、T細胞の成熟と機能を大きく阻害します。その結果、ほぼ完全なT細胞免疫不全状態となります。
  2. 体型と外見: アルビノ特性を持ち、一般的なBALB/cマウスに比べて体型が小さい。また、完全には無毛ではなく、細かな毛が生えています。
  3. NK(natural killer)細胞活性: T細胞機能の喪失にも関わらず、このモデルではNK細胞の活性が比較的高いと報告されています。

研究での利用

  1. がん研究: BALB/c nu/nuマウスは、ヒトの腫瘍細胞を移植してがんの成長と進行を研究するための理想的なモデルです。免疫不全のため、ヒト由来のがん細胞が拒絶されることなく、マウス体内で成長することが可能です。
  2. 薬剤評価: 新たに開発された抗がん剤や免疫療法の効果を評価する際にも使用されます。これにより、治療法の有効性や安全性を事前に評価することができます。
  3. 感染症の研究: 免疫応答の欠如は、特定の病原体に対する感受性を高めるため、感染症の研究にも用いられます。

管理と飼育

  1. 特別な飼育環境: 免疫不全であるので感染症からマウスを保護するために、BALB/c nu/nuマウスは無菌条件下での飼育が必要です。

BALB/c nu/nuマウスは、その独特な免疫学的特性から、多くの生物医学研究において貴重なツールとして位置づけられています。このモデルを用いた研究により、新しい治療法や疾患の理解が深まることが期待されています。

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