受精卵エレクトロポレーション法(GEEP 法)とは

受精卵エレクトロポレーション法(GEEP 法)とは、Cas9 タンパク質及びgRNA といったゲノム編集ツールを、電気の力(エレクトロポレーション)によって受精卵に導入する方法です。このGEEP法ではCRISPR/Cas9 ゲノム編集ツールをハイスループット・低コストかつ、ダメージの少ないかたちで受精卵に導入することができるため、例えば、遺伝子改変マウスの作製が非常に簡便になり、安価に提供することができます。

特許6980218号

これまで受精卵へのゲノム編集ツール導入に用い られてきたマイクロインジェクション法は、マイクロマニ ピュレーターといった専用の設備と高度な技術が求めら れます。一方、GEEP法では、必要な技術は受精卵を電極 に並べることのみであり、一度に複数個(20 個~ 200 個)の受精卵へゲノム編集ツールを導入することができます。
GEEP法を活用することで、短時間で均一な条件下 で、大量の受精卵に対して低侵襲にゲノム編集を行える というメリットを産み出し、高効率なゲノム編集生物の 作製が期待できます。
また、マウスのみならずブタなどへのGEEP法の応用も可能です。

比較表

ゲノム編集マウス作製法 受精卵エレクトロポレーション法 (GEEP法)
マイクロインジェクション法
100個の受精卵の取扱時間 15分以内 120分以上
ゲノム編集生物の発生率 高い 受精卵一つ一つに煩雑な作業を介すことがないので、
胚へのダメージが少ない
中程度
ノックアウトマウス
ノックインマウス
ブタなど他の哺乳類の ゲノム編集
コスト(設備) 安い 高い
技術者の熟練 不要 必要
自動化 可能 困難
技術確立 2015年 2014年

参考文献

  1. Hashimoto, M. and Takemoto, T*. Electroporation enables the efficient mRNA delivery into the mouse zygotes and facilitates CRISPR/Cas9-based genome editing. Sci. Rep. 5, 11315; doi: 10.1038/srep11315 (2015).
  2. Hashimoto M, Yamashita Y, Takemoto T*.Electroporation of Cas9 protein/sgRNA into early pronuclear zygotes generates non-mosaic mutants in the mouse. Dev. Biol. 418: 1-9 (2016).
  3. Tanihara F, Takemoto T*, Kitagawa E, Rao S, Do L, Onishi A, Yamashita Y, Kosugi C, Suzuki H, Sembon S, Suzuki S, Nakai M, Hashimoto M, Yasue A, Matsuhisa M, Noji N, Fujimura T, Fuchimoto Di, Otoi T*. Somatic cell reprogramming-free generation of genetically modified pigs. Science Advances. 2 (9) e1600803 (2016).