2025年10月のX紹介精密育種・ゲノム編集論文&ニュース

株式会社セツロテックのX(旧Twitter)アカウントでは、精密育種やゲノム編集技術に関する論文やニュースを、弊社メンバーが独断と偏見でピックアップしてつぶやいています。弊社の提供するサービスとは直接関係ない情報も含め、幅広くお届けしております。精密育種技術の社会実装を目指す大学発ベンチャーとして、皆さんの新技術への理解増進の一助になれば幸いです。ぜひ、フォローを!ここでは、2025年10月のポストで紹介した内容を再編成して掲載いたします。なお、本記事の内容は、発表された論文やニュースの内容を紹介するものであり、会社としての正式な見解では無く、担当者個人の理解によるものです。
Index
鳥類のES細胞を樹立・維持するための新しい培養条件
Derivation of embryonic stem cells across avian species Chen et al., Nat Biotechnol. 2025 Sep 30 (Online ahead of print).
ニワトリを含め8種類の鳥類から安定したES細胞を樹立・維持するための、新しい培養条件を確立。樹立したニワトリ胚性幹細胞は、三胚葉および生殖細胞へ分化する能力を示した。ゲノム編集技術の適用も含め、さまざまな分野への応用が期待される。Nature Biotechnology誌。
黒鞘菌病害に耐性のある精密育種カカオ
Reduced Susceptibility to Phytophthora in Non-Transgenic Cacao Progeny Through
CRISPR–Cas9 Mediated TcNPR3 Mutagenesis Guiltinan et al., Plant Biotechnol J. 2025 Sep 9 (Online ahead of print).
CRISPR-Cas9による精密育種と伝統的な交配育種によって、フィトフトラ属細菌による病害に耐性のあるカカオの苗木が誕生した。植物防御の負の調節因子であるTcNPR3遺伝子を編集した結果、黒鞘菌による病斑サイズが42%減少した。Plant Biotechnology Journal誌。
花が長持ちする精密育種ユリ
CRISPR/Cas9-mediated LhNAP mutagenesis extends flower longevity in lily
Shibuya et al., Plant Physiol Biochem. 2025 Sep 23;229(Pt C):110551.
CRISPR-Cas9システムによる精密育種で、ユリの花を長持ちさせることに成功。花糸由来のカルスをアグロバクテリウムで形質転換した結果、LhNAP遺伝子座位に両対立遺伝子変異を有する系統では、花びらの老化と離脱が遅くなった。Plant
Physiology and Biochemistry誌。
ヒト住血吸虫の中間宿主である巻貝のゲノム編集に成功
CRISPR/Cas9-germline editing of Biomphalaria glabrata: A breakthrough in genetic modification of snails that transmit schistosomiasis Oonuma et al., Sci Adv. 2025 Oct 10;11(41):eadx5889.
ヒト住血吸虫症を引き起こすマンソン住血吸虫の中間宿主である淡水産巻貝Biomphalaria glabrataのCRISPR-Cas9ゲノム編集に成功。感染や免疫応答に重要な遺伝子の機能が詳細に調べられるようになり、今後の住血吸虫症研究の技術基盤となる。Science Advances誌。
サイクリックGMP-AMP合成酵素の4つのアミノ酸変異が長寿の秘訣
A cGAS-mediated mechanism in naked mole-rats potentiates DNA repair and delays aging Chen et al., Science. 2025 Oct 9;390(6769):eadp5056.
ハダカデバネズミが長生きなのは、サイクリックGMP-AMP合成酵素(cGAS)の4つのアミノ酸変異のおかげ。AAVベクターを用いて老齢マウスにハダカデバネズミ型cGASを発現させると、白髪化の減少や複数組織における細胞老化マーカーの低下が観察された。Science誌。
crRNAの構造を変えてCas12a活性を制御する
Tailoring Cas12a functionality with a user-friendly and versatile crRNA variant toolbox Han et al., Nat Commun. 2025 Oct 8;16(1):8939.
crRNAダイレクトリピート配列の変異が、Cas12a活性の様々な制御を可能にする。crRNAのうち、フランキング配列(ループとステム以外の領域)の配列を変えるだけで、構造変化を介して、Cas12a-crRNA RNPに多様な活性を持たせることができた。Nature Communications誌。
ブーストCAR-T細胞で治療効果を大幅に高める
Systematic discovery of CRISPR-boosted CAR T cell immunotherapies
Datlinger et al., Nature. 2025 Oct;646(8086):963-972.
より増殖が速く、活性が高く、互いを攻撃する可能性が低い「ブーストCAR-T細胞」を作製するために、CRISPRスクリーニングプラットフォームを開発。これにより、RHOG遺伝子とFAS遺伝子のダブルノックアウトが、CAR-T細胞の治療効果を大幅に高めることを発見した。Nature誌。
ほとんどのサトウキビ品種の祖先は東メラネシア起源
The genomic footprints of wild Saccharum species trace domestication,
diversification, and modern breeding of sugarcane Garsmeur et al., Cell. 2025 Oct 14:S0092-8674(25)01085-2.
約400種のサトウキビ属のゲノムを解析したところ、現代のほとんどのサトウキビ栽培品種のゲノム祖先は、東メラネシア起源であった。この未知の祖先のゲノムを解析すれば、将来のサトウキビ作物に耐病性や気候耐性などの特性を持たせることに役立つ可能性がある。Cell誌。

