メールマガジン:ゲノム編集論文⑱

セツロテックでは、月に一度、最新のゲノム編集に関する情報をお届けするメールマガジンを配信しています。今回の記事では、メールマガジンの人気コーナー「最近のピックアップ論文」から厳選した内容をご紹介します。
配信号:2025年10月
サイクリックGMP-AMP合成酵素の4つのアミノ酸変異が長寿の秘訣
A cGAS-mediated mechanism in naked mole-rats potentiates DNA repair and delays aging Chen et al., Science. 2025 Oct 9;390(6769):eadp5056.
ハダカデバネズミは30年近くも生き、げっ歯類の中では極めて長寿である。中国同済大学のChenらは、ハダカデバネズミのサイクリックGMP-AMP合成酵素(cGAS)における4つのアミノ酸残基の変異が、DNA損傷後のクロマチンへの結合時間を延長させ、相同組換えを介した遺伝子損傷修復を促進していることを示した。CRISPR-Casゲノム編集でハダカデバネズミ細胞からcGASを枯渇させると、相同組換え修復が抑制され、DNA損傷が蓄積した。興味深いことに、ヒトやマウスではcGASは相同組換え経路に対して抑制的に機能しており、進化の過程で機能的な逆転が起きていることになる。AAVベクターを用いて老齢マウスにハダカデバネズミ型cGASを発現させると、白髪化の減少や複数組織における細胞老化マーカーの低下が観察された。優れたDNA修復能力の獲得が、長寿に寄与している可能性がある。(事業開発部T)
生物学的性別は、発達中の小児免疫系における免疫細胞の割合とエピジェネティックなプロファイルに影響を与える
Biological sex impacts immune cell proportions and epigenetic profiles in the developing pediatric immune system Karlie et al., Communications Biology, 2025, DOI: 10.1038/s42003-025-08844-9
自己免疫疾患は女性に多く、重症感染症は男性に多いなど、免疫応答には明確な性差が知られている。しかし、その起点がいつ生じるのかは十分に理解されていなかった。カナダの出生コホート「CHILD Study」を用いた最新報告は、1〜5歳の幼児期にすでに免疫系の性差が形成されていることを示した。760例の全血を用いたDNAメチル化解析(Illumina EPICアレイ)では、年齢に伴う免疫細胞構成の変化に加え、男女間でT細胞サブセットや単球比率に有意差を認めた。さらに性別関連CpG部位の大半が1歳から5歳で安定して維持されており、エピジェネティックな性差が思春期以前から免疫発達に影響する可能性を示唆する。今後は遺伝子発現や環境因子を含めた統合的解析が期待される。(共創推進部U)
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