Column

2026年3月のX紹介精密育種・ゲノム編集論文&ニュース

2026.04.28

X紹介精密育種・ゲノム編集論文&ニュース

株式会社セツロテックのX(旧Twitter)アカウントでは、精密育種やゲノム編集技術に関する論文やニュースを、弊社メンバーが独断と偏見でピックアップしてつぶやいています。弊社の提供するサービスとは直接関係ない情報も含め、幅広くお届けしております。精密育種技術の社会実装を目指す大学発ベンチャーとして、皆さんの新技術への理解増進の一助になれば幸いです。ぜひ、フォローを!ここでは、2026年3月のポストで紹介した内容を再編成して掲載いたします。なお、本記事の内容は、発表された論文やニュースの内容を紹介するものであり、会社としての正式な見解では無く、担当者個人の理解によるものです。

弊社研究員によるニワトリの品種改良加速技術の総説論文

Sterile chicken hosts for germline transmission: A review of recipient preparation strategies in avian biotechnology Chen et al., Protein Expr Purif. 2026 May:240:106903.
セツロテックの研究員らが発表した、ニワトリの品種改良加速技術(ゲノム編集技術)についての総説論文。本論文では、ニワトリを中心とした鳥類におけるゲノム編集技術について、特に生殖細胞を介した遺伝子改変技術に焦点を当てて概説する。また、遺伝子改変を行った生殖細胞が、効率的に次世代へと寄与するため技術について紹介する。具体的には、ホスト由来の生殖細胞を除去するさまざまな手法(物理・化学・放射線・遺伝学的手法)、陳奕臣研究員らが開発した最新技術「誘導型不妊化システム」を紹介している。

すべての生物ドメインを網羅したゲノム言語モデル「Evo 2」の登場

Genome modelling and design across all domains of life with Evo 2 Brixi et al., Nature. 2026 Mar 4 (Online ahead of print).
細菌、古細菌、真核生物、バクテリオファージのすべてのドメインを横断した遺伝子配列データセット(9 trillion DNA base pairs!)で学習したゲノム言語モデル「Evo 2」の報告。ゼロショットで、バリアントの影響の予測や特定の機能を持つDNA配列の設計が可能。Nature誌。

精密育種による「緑色」の「赤色レタス」

CRISPR/Cas9-mediated knockout of DFR alters pigmentation and shifts flavonoid accumulation in red leaf lettuce without detectable growth penalties Nagamine et al., Front Genome Ed. 2026 Mar 4:8:1755922.
CRISPR-Casゲノム編集技術で、緑色の”赤色レタス”を作製。アントシアニン合成に関わるDFR遺伝子をノックアウトすると、葉の赤色が消失し、ケルセチン類を含む他のフラボノイド群が増加した。機能性レタスの精密育種につながるか。Frontiers in Genome Editing誌。

deep mutational scanningによる改良型TnpB開発

Engineered TnpB genome editors for plants and human cells identified by ribonucleoprotein mutational scanning Thornton et al., Nat Biotechnol. 2026 Mar 11 (Online ahead of print).
酵母を使ったdeep mutational scanningによる改良型TnpB開発の報告。TnpBは「小さい」ので網羅的に変異を導入してしまい、各変異の影響を測定することで強化型変異体を同定。ヒト細胞、タバコ、トウガラシ、イネにおいて編集活性を高めた。Nature Biotechnology誌。

体内で直接CAR-T細胞を生成する新戦略

A gene-editing method generates immunotherapeutic CAR T cells in the body Holt & Evgin, Nature. 2026 Apr;652(8110):572-574.
マウスの体内で直接CAR-T細胞を生成する遺伝子編集戦略。ゲノム編集ツールを、AAVベクターとenveloped delivery vehicleで標的指向性を持たせて体内に送達し、CAR配列をTRAC遺伝子にノックインする。化学療法による前処置が必要なくなるかも。Nature誌のNews&Views記事。

ソルガムのパンゲノムリファレンスを構築

A sorghum pangenome reference improves global crop trait discovery Morris et al., Nature. 2026 Mar 11 (Online ahead of print).
ソルガム(コーリャン)のパンゲノムリファレンス構築の報告。ソルガムの用途は食用・飼料用・バイオエタノール用など多岐にわたり、こうした様々な系統にわたる種全体の遺伝的多様性をより広範に把握することで、育種を加速していく。Nature誌。

サーモンの精密育種に最適化したゲノム編集ツール

Codon-optimized base editors enable efficient base substitution in Atlantic salmon Wang et al., Trends Biotechnol. 2026 Feb 27:S0167-7799(26)00035-1.
アトランティックサーモンの精密育種に最適化したベースエディターの報告。試験管内および生体内において遺伝子改変を高い精度で実現できており、自然の変異を模倣し、疾病抵抗性や成長といった形質を向上させた持続可能な魚種の開発につながる。Trends in Biotechnology誌。

ゴキブリでのDIPA-CRISPR法の報告

Using DIPA-CRISPR for simple and efficient endogenous protein tagging in insects Ferrández-Roldán & Piulachs., Cell Rep Methods. 2026 Feb 23;6(2):101297.
DIPA-CRISPR法を用いたHDRノックインゲノム編集の報告。卵へのマイクロインジェクションが困難な卵鞘形成種(チャバネゴキブリ)において、成体雌への注射により、内在性distal-less遺伝子座位へのmCherry遺伝子のインフレーム導入に成功した。Cell Reports Methods誌。

ミドリイシサンゴのゲノム編集プロトコル

Efficient genome editing using CRISPR–Cas9 in reef-building corals Tinoco et al., Nat Protoc. 2026 Mar 2 (Online ahead of print).
造礁サンゴのゲノム編集プロトコル論文。ミドリイシサンゴの配偶子の産卵と採取、CRISPR-Cas9を用いた単細胞接合子へのマイクロインジェクション、インジェクションに成功した個体の同定と飼育、そしてゲノム改変の検出と定量化までを解説する。Nature Protocols誌。

細胞性粘菌で共通して利用できるCRISPRベクター

Genome editing across Dictyostelia species enables comparative functional genetics of social amoebas Oishi et al., Sci Rep. 2026 Feb 5;16(1):7457.
様々な細胞性粘菌で共通して利用できるCRISPRベクターを用いたゲノム編集の報告。キイロタマホコリカビ以外の、系統的に異なる複数の粘菌種でも遺伝子ノックアウトが可能になったことで、遺伝学的解析を種間で比較できる研究基盤が整った。Scientific Reports誌。

3つのアミノ酸サプリメントで細胞はたくさんLNPを取り込む

Amino acid supplementation enhances in vivo efficacy of lipid nanoparticle–mediated mRNA delivery in preclinical models Chen et al., Sci Transl Med. 2026 Mar 11;18(840):eadx4097.
脂質ナノ粒子投与にメチオニン、アルギニン、セリンの3種類のアミノ酸を加えることで、mRNA送達量が最大20倍、遺伝子編集効率が90%近くまで向上した。LNP自体の改良でなく、細胞がLNPを取り込む経路を広げる新たな研究の方向性。Science Translational Medicine誌。

精密育種における新たな規制区分けの提唱

Re-evaluating the site-directed nuclease classification as a regulatory trigger for genome-edited plant products Mewett et al., Nat Biotechnol. 2026 Mar 5 (Online ahead of print).
「SDN-1~3」以外の新たな規制区分けを提唱するNature Biotechnology誌の論評論文。植物育種の文脈においては、規制は開発プロセスで用いられる特定の手法ではなく、ゲノム編集による成果の特性に焦点を当てるべきであると主張する。

ゲノム編集技術による遺伝子編集治療の第三幕

Genome editing’s third act DeFrancesco, Nat Biotechnol. 2026 Mar;44(3):331-333.
最近の遺伝子編集治療の新たな展開を概説するNature Biotechnology誌のニュース記事。”Baby KJ”のような(おそらく高額になる)個別化治療からの転換を目指し、特定の疾患に焦点を当てるのではなく、多くの疾患に効果を発揮する遺伝子編集医薬品の開発が進みつつある。

米CRISPR特許紛争は再度Broad側に軍配

Nobel Prize winners face new loss in bid for US CRISPR patents Reuters 2026年3月28日
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