Column

2026年2月のX紹介精密育種・ゲノム編集論文&ニュース

2026.03.16

X紹介精密育種・ゲノム編集論文&ニュース

株式会社セツロテックのX(旧Twitter)アカウントでは、精密育種やゲノム編集技術に関する論文やニュースを、弊社メンバーが独断と偏見でピックアップしてつぶやいています。弊社の提供するサービスとは直接関係ない情報も含め、幅広くお届けしております。精密育種技術の社会実装を目指す大学発ベンチャーとして、皆さんの新技術への理解増進の一助になれば幸いです。ぜひ、フォローを!ここでは、2026年2月のポストで紹介した内容を再編成して掲載いたします。なお、本記事の内容は、発表された論文やニュースの内容を紹介するものであり、会社としての正式な見解では無く、担当者個人の理解によるものです。

AAVで大きな遺伝子を運ぶための新たな戦略

AAVLINK: A potent DNA-recombination method for large cargo delivery in gene therapy Lin et al., Cell. 2026 Feb 5;189(3):969-986.e17.
AAVのカーゴサイズの制約(4.7kb)を克服する「AAVLINK」戦略。巨大遺伝子をスプリットし、各断片を複数のAAVで送達して、細胞内でCre/loxを介して再構成する。残存するCreリコンビナーゼは組換え後に分解されるように設計され、治療利用時の安全性も考慮。Cell誌。

タンパク質言語モデルを用いたPAM特異性のカスタマイズ

Customizing CRISPR–Cas PAM specificity with protein language models Nayfach et al., Nat Biotechnol. 2026 Feb 2 (Online ahead of print).
深層学習モデルを利用して、Cas9をカスタマイズして別のPAM配列を認識させることに成功. Protein2PAMは、タイプI、II、VのCRISPR–Casシステム全体にわたって、Casタンパク質の配列情報から、PAM特異性を迅速かつ正確に予測する。Nature Biotechnology誌。

1つの塩基を修正するだけでマウスの行動異常が改善した

In vivo base editing of Chd3 rescues behavioural abnormalities in mice Yang et al., Nature. 2026 Feb 18 (Online ahead of print).
生体内でのChd3遺伝子塩基編集で、Snijders Blok-Campeau症候群モデルマウスの行動異常が改善。マウスが青春期に入ってから投与されたアデニン塩基編集因子で、1つの塩基を修正するだけで、生体内でのCHD3レベルが回復し、すべての行動特性の異常が改善された。Nature誌。

超小型ヌクレアーゼTnpBによる植物ゲノム編集

High-efficiency, transgene-free plant genome editing by viral delivery of an engineered TnpB Nagalakshmi et al., Nat Plants. 2026 Feb 20 (Online ahead of print).
高活性の改良型TnpBによる植物ゲノム編集の報告。単一のウイルスベクターに搭載可能なその小ささを活かし、改変TnpB変異体(eTnpBc)をタバコラトルウイルスで送達。ウイルス感染後の全身の葉において最大90%に達する体細胞編集効率を達成した。Nature Plants誌。

立体構造からCas9への分子進化の道のりを探る

Structural visualization of the molecular evolution of CRISPR–Cas9 Nagahata et al., Nat Struct Mol Biol. 2026 Feb;33(2):304-317.
Cas9の祖先型とされるコンパクトなRNA誘導型ヌクレアーゼIscBと立体構造を比較することで、Cas9への分子進化の道のりを探る。構成ドメインの変遷をたどることで、タンパク質が大型化する一方、ガイドRNAが小型化していったことが示唆された。Nature Structural & Molecular Biology誌。

真菌病原体の付着器を硬くする遺伝子を同定

Dihydroxyhexanoic acid biosynthesis controls turgor in pathogenic fungi Numakura et al., Science. 2026 Feb 12;391(6786):700-706.
真菌病原体が植物細胞内に侵入するために使う付着器の発達に重要な遺伝子を特定。真菌のPKS2およびPBG13遺伝子をノックアウトすると、付着器の細胞の膨圧は高くならず、植物細胞壁を貫通できるほど硬くならなかった。抗真菌対策の潜在的な標的となる。Science誌。

ブリッジリコンビナーゼによるヒト細胞ゲノム編集

Programmable genome editing in human cells using RNA-guided bridge recombinases Pelea et al., Science. 2026 Feb 5 (Online ahead of print).
ブリッジリコンビナーゼISCro4によるヒト細胞ゲノム編集の報告。ガイドRNAを分割することで、ISCro4の活性はさらに強化された。この機構は相同組換え修復(HDR)のメカニズムを必要とせず、HDR欠損細胞において従来法に対するメリットとなる。Science誌。

皮膚疾患に対する初のCRISPR遺伝子編集治療法

Lipid nanoparticle-based non-viral in situ gene editing of congenital ichthyosis-causing mutations in human skin models Apaydin et al., Cell Stem Cell. 2026 Feb 5;33(2):233-252.e12.
皮膚疾患に対する初のCRISPR遺伝子編集治療法の報告。レーザーを用いて皮膚外層に微小の開口部を作り、ここから脂質ナノ粒子で塩基編集ツールを送達する。ヒト皮膚モデルにおいて、先天性魚鱗癬(ARCI)の疾患変異を修正することに成功した。Cell Stem Cell誌。

面倒な組織培養のプロセスを省くためには?

CRISPR genome editing in plants without tissue culture Li et al., Trends Biotechnol. 2026 Feb 16 (Online ahead of print).
組織培養を必要としない植物ゲノム編集法についてのレビュー論文。従来の方法では、難易度が高い組織培養を介した体細胞再生が必要だったが、分裂組織細胞や生殖細胞への直接ゲノム編集を可能にすることで、このボトルネックを回避する。Trends in Biotechnology誌。

ポップコーンのような香りのする芳香トマト

Generating popcorn-like fragrant tomato using CRISPR/Cas9-mediated gene editing Zheng et al., J Integr Agric. 2026 Jan 24 (Online ahead of print).
CRISPR-Casによる精密育種で、ポップコーンのような香りのする「芳香トマト」を開発。バスマティ米を参考に、トマトの2つのBADH2遺伝子をノックアウトし、揮発性の2-アセチル-1-ピロリンの含有量をアップさせた。収量は低下せず。Journal of Integrative Agriculture誌。

遺伝子が壊れた時に「代打」を探すメカニズム

Mechanisms linking cytoplasmic decay of translation-defective mRNA to transcriptional adaptation El-Brolosy et al., Science. 2026 Feb 12;391(6786):eaea1272.
遺伝子が壊れた時に「代打」を探すメカニズム。ゲノムワイドCRISPRスクリーニングによって特定されたシャトルタンパク質ILF3は、細胞質での異常mRNA分解の際に残る小さなRNA断片に結合すると、核内でこれに類似する配列を持つ関連遺伝子の転写を活性化する。Science誌。

トウモロコシの精密育種技術で「一石二鳥」を実現

Rewiring an E3 ligase enhances cold resilience and phosphate use in maize Liao et al., Nature. 2026 Feb 25 (Online ahead of print).
トウモロコシの精密育種で、耐寒性とリン吸収効率の向上を両立させた高収量品種を作ることに成功。CRISPR-Cas9システムを用いて、E3ユビキチンリガーゼNLAタンパク質の4アミノ酸残基を欠失させることで、リンの取り込みを減少させることなく耐寒性が得られた。Nature誌。

昆虫による動物実験代替の可能性

PiggyBac-mediated transgenesis and CRISPR–Cas9 knockout in the greater wax moth, Galleria mellonella Pearce et al., Lab Anim (NY). 2026 Mar;55(3):95-102.
ガの幼虫が、マウスやラットの代替になるかもしれない。ハチミツガ(Galleria mellonella)において、CRISPR-Cas9システムを使った遺伝子ノックアウトに初めて成功。筆者らは、感染生物学などで、安価で倫理的に適合した動物モデルとなる可能性を主張する。Lab Animal誌。