2024年5月のX(Twitter)紹介ゲノム編集論文&ニュース

株式会社セツロテックのX(Twitter)アカウントでは、ゲノム編集に関する論文やニュースを、弊社メンバーが独断と偏見でピックアップしてつぶやいています。弊社の提供するサービスとは直接関係ない情報も含め、幅広くお届けしております。ゲノム編集技術の社会実装を目指す大学発ベンチャーとして、皆さんの新技術への理解増進の一助になれば幸いです。ぜひ、フォローを!ここでは、2024年5月のポストで紹介した内容を再編成して掲載いたします。なお、本記事の内容は、発表された論文やニュースの内容を紹介するものであり、会社としての正式な見解では無く、担当者個人の理解によるものです。

シクリッドの「好奇心」の度合いを左右する遺伝子変異

The genetics of niche-specific behavioral tendencies in an adaptive radiation of cichlid fishes
Sommer-Trembo et al., Science. 2024 Apr 26;384(6694):470-475.
https://doi.org/10.1126/science.adj9228
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タンガニーカ湖に住む57種のシクリッドを実験池に放し、最初の15分でどれだけ池の中を探索したかと、種間のゲノム変異を関連付け。特定したcacng5b遺伝子近くの遺伝子型をCRISPRゲノム編集で再現すると、魚の探索行動が変化し”好奇心旺盛”になった。Science誌のカバー論文。

我々の体の中にいるたくさんの細菌もCas9を持っている

CoCas9 is a compact nuclease from the human microbiome for efficient and precise genome editing
Pedrazzoli et al., Nat Commun. 2024 Apr 24;15(1):3478
https://doi.org/10.1038/s41467-024-47800-9
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皮膚、口腔内や腸内などのヒトマイクロバイオームの中から、多数の新規Cas9ヌクレアーゼのコレクションを同定。深海や火山噴出口などの極限環境に行かなくても、灯台下暗しで、お宝は我々の体の中にあるのかもしれない。Nature Communications誌。

ベンチャー、大企業、研究所がワンチームでゲノム編集ツールを開発

日本発のゲノム編集ツールで新たな道を開く!
産総研マガジン 2024年5月1日
https://www.aist.go.jp/aist_j/magazine/20240501.html
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記事紹介ポストをリポストのみ。弊社技術顧問の菅野茂夫先生のご研究を紹介。

ヒトの皮膚(に似た)組織をマウスの体表に作ることに成功

Skin graft with dermis and appendages generated in vivo by cell competition
Nagano et al., Nat Commun. 2024 Apr 29;15(1):3366.
https://doi.org/10.1038/s41467-024-47527-7
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CRISPR/Cas9ゲノム編集で、重層上皮の分化に必要なp63遺伝子をノックアウトしたマウス胚の羊膜腔に、ヒトケラチノサイトを注入すると”Semi-humanized skin”が形成された。今後は、移植片サイズを大きくできるブタを使って研究を進めるとのこと。Nature Communications誌。

生成AIがゲノム編集ツールを設計する時代に

‘ChatGPT for CRISPR’ creates new gene-editing tools
Callaway, Nature. 2024 May;629(8011):272.
https://doi.org/10.1038/d41586-024-01243-w
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生成AIを使って、自然界には存在しない「ゲノム編集ツール」を設計し、なおかつそれがワークすることを確認したとするPreprintが提出されたのこと。「完全に機械学習によって設計されたタンパク質によるヒトゲノムの編集に初めて成功した」と報告。Nature誌のNEWS記事。

ゲノム編集技術は、有機農業や自然農法などと相反するものではない

Can genome editing help transitioning to agroecology?
Nogue et al., iScience. 2024 Feb 9;27(3):109159.
https://doi.org/10.1016/j.isci.2024.109159
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ゲノム編集技術は、生物間の生態学的相互作用を重視する「アグロエコロジー」に反する存在でなく、これらに貢献する品種改良のツールとして活用可能と論ずる。特に、生物多様性の維持・強化、土壌の健全性の維持・改善、化学物質の投入削減に貢献できる。iScience誌。

トゥレット症候群のモデルマウスをCRISPR/Cas9ゲノム編集で作製

Human mutations in high-confidence Tourette disorder genes affect sensorimotor behavior, reward learning, and striatal dopamine in mice
Nasello et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2024 May 7;121(19):e2307156121.
https://doi.org/10.1073/pnas.2307156121
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CRISPR/Cas9ゲノム編集を用いて、CELSR3とWWC1の2つの遺伝子に変異を導入し、トゥレット症候群のモデルマウスを作製。プレパルス抑制の低下や反復運動行動の増加など、ヒト患者で見られるのと同じ行動や脳の異常を示した。新しい薬をテストするための動物モデルに。PNAS誌。

iPS細胞での点変異導入ゲノム編集を高効率に実施するプロトコル/

A high efficiency precision genome editing method with CRISPR in iPSCs
Singh et al., Sci Rep. 2024 Apr 30;14(1):9933.
https://doi.org/10.1038/s41598-024-60766-4
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一般にゲノム編集効率が悪いiPS細胞での点変異導入において、p53の活性化を阻害+細胞生存を促進する低分子を利用することで、90%以上の相同組換え率を達成。Figure 1にある通り、このプロトコルでは8週間程度で系統樹立が可能だったとのこと。Scientific Reports誌。

プライム編集や塩基編集でも特許権が争点となる

Prime editing deal flurry to nail down patent rights
Arnold et al., Nat Biotechnol. 2024 Apr;42(4):542-544.
https://doi.org/10.1038/s41587-024-02208-0
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プライム編集や塩基編集の利用(特に医療分野で)が進むにつれ、特許権の衝突を想定し、それを避ける戦略的な動き(合併、買収、提携、新たな因子の探索)も活発化しつつある。合従連衡の戦国時代の幕開け。Nature Biotechnology誌のニュース記事。

英国と米国で始まった「ゲノム編集治療」の実用化について解説

ゲノム編集で病気を治療、英米で実用化 日本は取り巻く環境の整備を
産経新聞 2024年5月19日
https://www.sankei.com/article/20240519-DG7TOGS6YFJO5BGX7Z3AEEE4O4/
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記事紹介ポストをリポストのみ。

IS607 TnpBはゲノム編集の「はさみ」として利用できる

IS607 TnpB is a hypercompact RNA-guided DNA endonuclease
Yang et al., Cell Res. 2024 May 14 (Online ahead of print).
https://doi.org/10.1038/s41422-024-00973-w
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IS607トランスポゾンのTnpBは、約390アミノ酸と超コンパクトなタンパク質であり、RNAガイド型のDNAエンドヌクレアーゼである(つまりゲノム編集の「はさみ」として利用できる)とのこと。reRNAとRNP複合体を形成し、dsDNAを切断する。Cell Reports誌のリサーチハイライト。

サケの精子や卵子をニジマスに作らせる

Gametes of semelparous salmon are repeatedly produced by surrogate rainbow trout
Yoshizaki et al., Sci Adv. 2024 May 24;10(21):eadm8713.
https://doi.org/10.1126/sciadv.adm8713
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サケの生殖幹細胞は、生涯に1度だけ精子/卵子を作ると消失してしまう。だが、これを、CRISPRゲノム編集で作製した代理親ニジマス(dnd-KO)の体細胞環境に移植すると、複数年にわたって体内で生存し、何度も「サケ」の精子/卵子を作ることができた。Science Advances誌。

造血系を維持したまま、骨髄移植の移植前処置を実施する

Selective haematological cancer eradication with preserved haematopoiesis
Garaudé et al., Nature. 2024 May 22 (Online ahead of print).
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07456-3
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デアミナーゼによるゲノム編集で点変異を導入し、CD45を標的とする抗体薬剤複合体(ADC)の影響を受けない血液幹細胞を作製。この遺伝子編集血液幹細胞を事前に移植しておくことで、造血系を維持したまま、白血病細胞のみをADCで選択的に根絶することができた。Nature誌。

フィリピンでもゲノム編集トマトが規制対象から除外

ゲノム編集高GABAトマト フィリピン農務省植物産業局のプロセスを完了
サナテックライフサイエンス株式会社2024年5月24日
https://sanatech-seed.com/ja/240524/
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プレスリリース紹介ポストをリポストのみ。

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