2024年4月のX(Twitter)紹介ゲノム編集論文&ニュース

株式会社セツロテックのX(Twitter)アカウントでは、ゲノム編集に関する論文やニュースを、弊社メンバーが独断と偏見でピックアップしてつぶやいています。弊社の提供するサービスとは直接関係ない情報も含め、幅広くお届けしております。ゲノム編集技術の社会実装を目指す大学発ベンチャーとして、皆さんの新技術への理解増進の一助になれば幸いです。ぜひ、フォローを!ここでは、2024年4月のポストで紹介した内容を再編成して掲載いたします。なお、本記事の内容は、発表された論文やニュースの内容を紹介するものであり、会社としての正式な見解では無く、担当者個人の理解によるものです。

ミジンコは概日時計を使ってオスとメスを産み分ける

Daphnia uses its circadian clock for short-day recognition in environmental sex determination
Abe et al., Curr Biol. 2024 May 6;34(9):2002-2010.e3.
https://doi.org/10.1016/j.cub.2024.03.027
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ミジンコは日長を感受し、季節ごとに、昼が長いとメス(単為生殖)、昼が短いとオスと産み分けている。CRISPR/Cas9ゲノム編集でperiod遺伝子をノックアウトし、概日時計を壊したゲノム編集ミジンコでは、長日でも短日でもメスだけを産むようになった。Current Biology誌。

長鎖ノックインマウス作製にはAAV-EP 法がおすすめ

Streamlining mouse genome editing by integrating AAV repair template delivery and CRISPR-Cas electroporation
Moncaut et al., Lab Anim (NY). 2024 May;53(5):115-116.
https://doi.org/10.1038/s41684-024-01363-w
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ゲノム編集で長鎖ノックインマウスを作製するには、まずAAVベクター(up to 4.7 kb)で修復テンプレート導入を行い、次にエレクトロポレーションでCas9+sgRNAの導入を行う AAV-EP 法をおすすめする記事。Lab Animal誌のNews&Views。

日米首脳会談に合わせ、バイオテクノロジーをめぐる政策対話を創設

バイオ技術、日米で政策対話 ゲノム編集など優位確保
日本経済新聞 2024年4月7日
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA060U70W4A400C2000000/
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記事紹介ポストをリポストのみ

隣り合う葯を「ジッパー」でつなぎとめて花の内部に閉鎖空間を作る

HD-Zip proteins modify floral structures for self-pollination in tomato
Wu et al., Science. 2024 Apr 5;384(6691):124-130.
https://doi.org/10.1126/science.adl1982
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現代のトマト品種では、花の5枚の葯がねじれて円錐形を作ることで、内部空間での自家受粉を促進している。これは有利な形質を子孫に残すうえで有用。CRISPR/Casゲノム編集を用いて、隣り合う葯をつなぎとめる「ジッパー」の形成を制御する3つの遺伝子を同定した。Science誌。

窒素固定の能力を獲得しつつある真核生物を初めて発見

Nitrogen-fixing organelle in a marine alga
Coale et al., Science. 2024 Apr 12;384(6692):217-222.
https://doi.org/10.1126/science.adk1075
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海洋性の藻類B. bigelowiiでは、細胞内の共生体(細菌)がオルガネラ化し、窒素固定をする「ニトロプラスト」へ移行しつつあることを発見。高知県産のところてんを材料にした培地の開発がポイントに。ゲノム編集などによる工学的な利用の可能性も。Science誌のカバー論文。

ゲノム編集技術で干ばつ耐性の高いコムギを作出

The potassium transporter TaNHX2 interacts with TaGAD1 to promote drought tolerance via modulating stomatal aperture in wheat
Li et al., Sci Adv. 2024 Apr 12;10(15):eadk4027.
https://doi.org/10.1126/sciadv.adk4027
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液胞に局在するカリウム/プロトン交換体のTaNHX2遺伝子をゲノム編集することで、干ばつ耐性の高いコムギを作出。TaNHX2は、GABAを合成するGAD1酵素の活性を促進することで気孔開口部を調節し、コムギの乾燥抵抗性に寄与していた。Science Advances誌。

FOXO1遺伝子を過剰発現させるとCAR-T細胞の抗腫瘍活性が向上した

FOXO1 is a master regulator of memory programming in CAR T cells
Doan et al., Nature. 2024 May;629(8010):211-218.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07300-8
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CAR-T細胞のFOXO1遺伝子を、CRISPRゲノム編集でノックアウトすると、記憶関連遺伝子の発現が低下し、動物試験で抗腫瘍活性がなくなった。逆に、FOXO1遺伝子を過剰発現させると、マウスin vivoでの持続性と腫瘍制御能が向上した。Nature誌。

純国産ゲノム編集ツール「Zinc Finger-ND1」の高機能化に成功

Engineering of Zinc Finger Nucleases Through Structural Modeling Improves Genome Editing Efficiency in Cells
Katayama et al., Adv Sci (Weinh). 2024 Apr 10:e2310255.
https://doi.org/10.1002/advs.202310255
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プレスリリース紹介ポストをリポストのみ。

Tgfbr1遺伝子を尾側でノックアウトしたマウス胚では6本の足が形成される

Tgfbr1 controls developmental plasticity between the hindlimb and external genitalia by remodeling their regulatory landscape
Lozovska et al., Nat Commun. 2024 Mar 20;15(1):2509.
https://doi.org/10.1038/s41467-024-46870-z
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Cre-loxPとゲノム編集技術を用いて、マウス胚の尾側半分でのみTgfbr1遺伝子をノックアウトしたところ、外性器が消滅し、代わりに後肢1対が余分に発生した(計6本の足に)。中胚葉の発生可塑性を示す。研究者にとっては「蛇足」ではなかったわけで。Nature Communications誌。

植物でもcAMPシグナル伝達系が機能していた

The cAMP signaling module regulates sperm motility in the liverwort Marchantia polymorpha
Yamamoto et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2024 Apr 16;121(16):e2322211121.
https://doi.org/10.1073/pnas.2322211121
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ゼニゴケでCRISPR/Cas9ゲノム編集を用いて、動物やバクテリアに広く存在するcAMPシグナル伝達系が、植物でも機能していることを示す。cAMPの合成/加水分解酵素CAPEの機能を欠損させると、精子の鞭毛運動に異常をきたし、運動性が低下した。立命館大学らのチーム。PNAS誌。

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