2023年12月のX(Twitter)紹介ゲノム編集論文&ニュース
株式会社セツロテックのX(Twitter)アカウントでは、ゲノム編集に関する論文やニュースを、弊社メンバーが独断と偏見でピックアップしてつぶやいています。弊社の提供するサービスとは直接関係ない情報も含め、幅広くお届けしております。ゲノム編集技術の社会実装を目指す大学発ベンチャーとして、皆さんの新技術への理解増進の一助になれば幸いです。ぜひ、フォローを!ここでは、2023年11月のポストで紹介した内容を再編成して掲載いたします。なお、本記事の内容は、発表された論文やニュースの内容を紹介するものであり、会社としての正式な見解では無く、担当者個人の理解によるものです。
Index
- 1. ウナギの力でゼブラフィッシュにクラゲの遺伝子を入れる
- 2. ソメワケササクレヤモリのCRISPR/Cas9ゲノム編集に成功
- 3. 深い海の中から新たなゲノム編集因子を見つけ出す
- 4. 再発性の癌細胞に特異的な反復配列を特定し、ゲノム編集の標的とする
- 5. 英国に続いて米FDAも鎌状赤血球貧血症のゲノム編集治療を承認(日本経済新聞)
- 6. 腸内細菌叢のゲノム編集についてダウドナさんのインタビュー記事(WIRED)
- 7. ヒトiPS細胞に対する高効率な蛍光タンパク質導入法を開発
- 8. iPS細胞による子宮頸がん治療法が来夏にも治験へ
- 9. 繊毛による胚の左右対称性の破れにはNO産生が関与する
- 10. あらかじめ塩基編集システムをマウスゲノムに組み込んだモデルマウス
- 11. ゲノム編集技術を利用して開発した「高成長ヒラメ」の届出が完了
- 12. ダウドナさんによる2024年のゲノム編集技術の展望(WIRED)
- 13. しらみつぶしに1個ずつ遺伝子の塩基を編集して機能解析する
- 14. リガンドだけでなく、その受容体も一緒にセットでお届け
1. ウナギの力でゼブラフィッシュにクラゲの遺伝子を入れる
Electric organ discharge from electric eel facilitates DNA transformation into teleost larvae in laboratory conditions
Sakaki et al., PeerJ. 2023 Dec 4:11:e16596.
https://doi.org/10.7717/peerj.16596
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電気ウナギは遺伝子導入のエレクトロポレーターとなるか?ドナーDNA溶液中のゼブラフィッシュ胚に、デンキウナギ(全長60cm)の高電圧パルス状の電気ショックを与えたところ、一部の処理胚でモザイク状の緑色蛍光が観察された。名古屋大学らのチーム。PeerJ誌。
2. ソメワケササクレヤモリのCRISPR/Cas9ゲノム編集に成功
A reverse genetic approach in geckos with the CRISPR/Cas9 system by oocyte microinjection
Abe et al., Dev Biol. 2023 May:497:26-32.
https://doi.org/10.1016/j.ydbio.2023.02.005
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爬虫類は受精直後の受精卵を取得するのが困難なので、メスの未授精の卵母細胞へマイクロインジェクションした後にオスと交配させることで、ヤモリのCRISPR/Cas9ゲノム編集に成功。白いアルビノ個体を作製。Developmental Biology誌。ソメワケササクレヤモリはペットとしても人気ですね。
3. 深い海の中から新たなゲノム編集因子を見つけ出す
特徴的な配列を認識してゲノムを切断!産総研プレスリリース2023年11月30日
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深海堆積物から単離された微生物のゲノムデータベースから、新たなゲノム編集因子「AalCas9」を発見。PAM配列は、5’-NNACG-3’。産総研や凸版印刷、インプランタイノベーションズらのチーム。
4. 再発性の癌細胞に特異的な反復配列を特定し、ゲノム編集の標的とする
Targeting the non-coding genome and temozolomide signature enables CRISPR-mediated glioma oncolysis
Tan et al., Cell Rep. 2023 Nov 28;42(11):113339.
https://doi.org/10.1016/j.celrep.2023.113339
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再発することが多い悪性脳腫瘍の治療戦略として、CRISPRゲノム編集を用いる。再発腫瘍細胞だけに存在するノンコーディング領域の反復DNA配列を特定。それを標的にしたゲノム編集で、がん細胞のゲノムを破砕(shredding)し、腫瘍細胞のみを死滅させた。Cell Reports誌。
5. 英国に続いて米FDAも鎌状赤血球貧血症のゲノム編集治療を承認(日本経済新聞)
世界初のゲノム編集治療、米が承認 血液疾患対象日本経済新聞 2023年12月9日
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記事の紹介ポストをリポストのみ。
6. 腸内細菌叢のゲノム編集についてダウドナさんのインタビュー記事(WIRED)
マイクロバイオーム内のゲノム編集が人体と地球を救う? ジェニファー・ダウドナの新たな挑戦WIRED 2023年12月11日
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記事の紹介ポストをリポストのみ。
7. ヒトiPS細胞に対する高効率な蛍光タンパク質導入法を開発
Efficient selection of knocked-in pluripotent stem cells using a dual cassette cellular elimination system
Nakade et al., Cell Rep Methods. 2023 Dec 18;3(12):100662.
https://doi.org/10.1016/j.crmeth.2023.100662
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幹細胞では低いノックインゲノム編集の効率を、ノックインされなかった細胞を薬剤で除去することで濃縮する。HSV-tk遺伝子をホモロジーアームの外側に2つ配置。正しく相同組換えされず、想定外のゲノム配列にランダムに挿入された細胞を、ガンシクロビルで除去する。Cell Reports Methods誌。
8. iPS細胞による子宮頸がん治療法が来夏にも治験へ
iPSC-derived hypoimmunogenic tissue resident memory T cells mediate robust anti-tumor activity against cervical cancer
Furukawa et al., Cell Rep Med. 2023 Dec 19;4(12):101327.
https://doi.org/10.1016/j.xcrm.2023.101327
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健常な人の血液から樹立したiPS細胞から、患者の子宮頸がんを攻撃する免疫細胞を作製する。CRISPR/Cas9ゲノム編集でHLAクラスⅠ抗原を編集し、患者に他家移植したときの拒絶反応を抑えた。来夏にも治験が開始予定とのこと。順天堂大学らのチーム。Cell Reports Medicine誌。
9. 繊毛による胚の左右対称性の破れにはNO産生が関与する
Cytoglobin regulates NO-dependent cilia motility and organ laterality during development
Rochon et al., Nat Commun. 2023 Dec 14;14(1):8333.
https://doi.org/10.1038/s41467-023-43544-0
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サイトグロビンは、一酸化窒素産生を調節して繊毛の機能を正常に保つことで、臓器の左右非対称性の発生に関与していた。CRISPRゲノム編集で、ゼブラフィッシュのサイトグロビン遺伝子を欠失させたところ、心臓の位置が鏡像対称に左右反転した。Nature Communications誌。
10. あらかじめ塩基編集システムをマウスゲノムに組み込んだモデルマウス
Cancer variant modeling in vivo
Istadi et al., Nat Biotechnol. 2023 Dec 20.
https://doi.org/10.1038/s41587-023-02080-4
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塩基編集やプライム編集のシステムを、Rosa26などのゲノムに組み込んだ遺伝子改変マウスを作製。がんにおける特定の一塩基変異の機能的な関連性を調べ、評価するためのプラットフォームとして使用する。Nature Biotechnology誌のNews & Views記事。
11. ゲノム編集技術を利用して開発した「高成長ヒラメ」の届出が完了
リージョナルフィッシュ社プレスリリース 2023年12月25日
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プリスリリースの紹介ポストをリポストのみ。
12. ダウドナさんによる2024年のゲノム編集技術の展望(WIRED)
ゲノム編集技術を活用した治療法を万人のもとへ:ジェニファー・ダウドナWIRED 2023年12月25日
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記事の紹介ポストをリポストのみ。
13. しらみつぶしに1個ずつ遺伝子の塩基を編集して機能解析する
High-throughput PRIME-editing screens identify functional DNA variants in the human genome
Ren et al., Mol Cell. 2023 Dec 21;83(24):4633-4645.e9.
https://doi.org/10.1016/j.molcel.2023.11.021
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DNA二本鎖切断もドナーDNAも使わないゲノム編集技術である「プライム編集」を使って、網羅的に遺伝子の塩基を1つずつ変えて機能解析する。GWASでわかった疾患に関連するバリアントのアノテーションなど、ゲノム配列の1塩基分解能での特性解析が可能に。Molecular Cell誌。
14. リガンドだけでなく、その受容体も一緒にセットでお届け
Cytoneme-mediated transport of active Wnt5b–Ror2 complexes in zebrafish
Zhang et al., Nature. 2024 Jan;625(7993):126-133.
https://doi.org/10.1038/s41586-023-06850-7
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シグナル伝達を受ける側の細胞が受容体を持っていなくても、細胞膜の突起によって、シグナル産生細胞からリガンドと受容体の複合体を丸ごと輸送することで、シグナルを受け取れるようになる。ゼブラフィッシュ胚での結果。発生生物学を聞きかじった身としてはかなり驚き。Nature誌。