2023年11月のX(Twitter)紹介ゲノム編集論文&ニュース
株式会社セツロテックのX(Twitter)アカウントでは、ゲノム編集に関する論文やニュースを、弊社メンバーが独断と偏見でピックアップしてつぶやいています。弊社の提供するサービスとは直接関係ない情報も含め、幅広くお届けしております。ゲノム編集技術の社会実装を目指す大学発ベンチャーとして、皆さんの新技術への理解増進の一助になれば幸いです。ぜひ、フォローを!ここでは、2023年11月のポストで紹介した内容を再編成して掲載いたします。なお、本記事の内容は、発表された論文やニュースの内容を紹介するものであり、会社としての正式な見解では無く、担当者個人の理解によるものです。
Index
- 1. 網羅的なCRISPRスクリーニングでマスターリプレッサーを探す
- 2. CRISPRを用いた鎌状赤血球症の治療法をFDAが審査
- 3. AAVベクターの「2台使い」でdCas9をin vivo送達する
- 4. 超音波で細胞を「温めて」ゲノム編集を実施する
- 5. ES細胞でのゲノムスワッピングによる大規模なヒト遺伝子置換
- 6. 塩基編集のためのドラッグデリバリーシステムのレビュー論文
- 7. 世界初のゲノム編集治療がイギリスで承認(日本経済新聞)
- 8. 公開シーケンスデータを「採掘」して188種類のCRISPRシステムを同定
- 9. シャルコー・マリー・トゥース病のゲノム編集による治療法
- 10. 広島大学佐久間先生によるゲノム編集技術の総説記事
1. 網羅的なCRISPRスクリーニングでマスターリプレッサーを探す
Unbiased transcription factor CRISPR screen identifies ZNF800 as master repressor of enteroendocrine differentiation
Lin et al., Science. 2023 Oct 27;382(6669):451-458.
https://doi.org/10.1126/science.adi2246
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腸オルガノイドで、1800種類のヒト転写因子の系統的なCRISPRノックアウトスクリーニングを行うことで、ZNF800が腸内分泌細胞の分化の制御因子であることを特定した。PAX4などの上流でマスターリプレッサーとして機能する。Science誌。
2. CRISPRを用いた鎌状赤血球症の治療法をFDAが審査
Is CRISPR safe? Genome editing gets its first FDA scrutiny
Ledford, Nature. 2023 Nov;623(7986):234-235.
https://doi.org/10.1038/d41586-023-03317-7
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CRISPRを用いた鎌状赤血球症の治療法の安全性について、米FDAが審査中。Vertex Pharmaceuticals社とCRISPR Therapeutics社が安全性データを提出。患者の造血幹細胞を取り出し、BCL11A遺伝子をCRISPR/Cas9で欠損させた後で、自家移植して戻す。Nature誌のニュース記事。
3. AAVベクターの「2台使い」でdCas9をin vivo送達する
mRNA trans-splicing dual AAV vectors for (epi)genome editing and gene therapy
Riedmayr et al., Nat Commun. 2023 Oct 18;14(1):6578.
https://doi.org/10.1038/s41467-023-42386-0
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1台に乗らない大きさの場合は2台に分けて運べばよい、ということで、2つのAAVにdCas9を5’側と3’側に分割してそれぞれ乗せ、in vivo送達する。別々に運んだあとで、トランススプライシングによって転写産物レベルで繋いで、1本のmRNAとする。Nature communincations誌。
4. 超音波で細胞を「温めて」ゲノム編集を実施する
Sonogenetic control of multiplexed genome regulation and base editing
Liu et al., Nat Commun. 2023 Oct 18;14(1):6575.
https://doi.org/10.1038/s41467-023-42249-8
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ヒートショックプロテインのプロモーター下流にdCas12aを挿入し、高強度の集束超音波を照射した際の局所的な「熱」をトリガーにして、照射部の細胞のみで塩基編集がされるように。in vitroおよびin vivoの両方で実証。Nature communications誌。
5. ES細胞でのゲノムスワッピングによる大規模なヒト遺伝子置換
Mouse genome rewriting and tailoring of three important disease loci
Zhang et al., Nature. 2023 Nov;623(7986):423-431.
https://doi.org/10.1038/s41586-023-06675-4
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ヒト化マウス作製の新たな手法”GREAT-GEMMs”:目的DNA配列(~200kb)を酵母で構築し、ES細胞で段階的にマウスゲノムをスワッピングすることで、タンパク質コード領域+それ以外の調節エレメントやイントロンなども含め、大規模にヒト遺伝子に置き換える。Nature誌。
6. 塩基編集のためのドラッグデリバリーシステムのレビュー論文
Drug delivery systems for CRISPR-based genome editors
Madigan et al., Nat Rev Drug Discov. 2023 Nov;22(11):875-894.
https://doi.org/10.1038/s41573-023-00762-x
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紹介ポストをリポストのみ
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7. 世界初のゲノム編集治療がイギリスで承認(日本経済新聞)
ゲノム編集治療を初の実用化、英国承認 重い貧血症で
日本経済新聞 2023年11月17日
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE16DP80W3A111C2000000/
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記事の紹介ポストをリポストのみ
8. 公開シーケンスデータを「採掘」して188種類のCRISPRシステムを同定
Uncovering the functional diversity of rare CRISPR-Cas systems with deep terascale clustering
Altae-Tran et al., Science. 2023 Nov 24;382(6673):eadi1910.
https://www.science.org/doi/10.1126/science.adi1910
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ビッグデータ解析で用いられるハッシュ法を応用し、公開データベースの膨大な量の遺伝子データを素早く検索する新たなアルゴリズムを開発。たった数週間で、細菌ゲノム中から188種類の珍しいCRISPRシステムを発見することに成功した。MITのFeng Zhangらのチーム。Science誌。
9. シャルコー・マリー・トゥース病のゲノム編集による治療法
AAV-mediated genome editing to normalize PMP22 gene duplication responsible for Charcot-Marie-Tooth disease type 1A
Yoshioka et al., Commun Med (Lond). 2023 Nov 28;3(1):170.
https://doi.org/10.1038/s43856-023-00400-y
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プレスリリースの紹介ポストをリポストのみ
10. 広島大学佐久間先生によるゲノム編集技術の総説記事
多様化するCRISPRテクノロジー 基盤的ツールから周辺技術まで、相乗的・多発的に進展するゲノム編集技術開発の現況を俯瞰する
佐久間哲史、赤瀬まりな 実験医学2023年12月号
https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/articles/index.html?ci=109100
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記事紹介ポストをリポストのみ