メールマガジン:ゲノム編集論文㉖

セツロテックでは、月に一度、最新のゲノム編集に関する情報をお届けするメールマガジンを配信しています。今回の記事では、メールマガジンの人気コーナー「最近のピックアップ論文」から厳選した内容をご紹介します。
配信号:2026年6月
1.CRISPR/Cas9におけるtracrRNA依存的オフターゲットを抑えるガイドRNA再設計
Guide RNA reprogramming facilitates minimized tracrRNA-dependent off-target and versatile CRISPR/Cas9 engineering. Yu, W., Chen, J., Guo, J. et al. Nature Communications (2026).
https://doi.org/10.1038/s41467-026-74520-z
CRISPR/Cas9の安全性評価では、これまで主に「設計したガイドRNAが似たDNA配列を誤って切る」問題が注目されてきました。本研究は、細胞内にもともと存在するRNAがtracrRNAに結合し、ガイドRNA様に働くことで、低頻度ながら広範なオフターゲット編集を起こし得ることを示しました。さらに、機械学習と高スループットスクリーニングを用いて、このtracrRNA依存的オフターゲットを抑えるgRNA設計ルールを導出。加えて、mRNA検出や多重遺伝子編集に応用可能なsegRNAプラットフォームも開発しています。既存CRISPRの精度改善だけでなく、より安全で拡張性の高いゲノム編集ツール開発につながる成果です。CRISPRを治療・細胞加工へ展開する上で、gRNA scaffoldそのものを安全性設計の対象として見直す重要性を示した論文です。
2. bridge RNAとIS621リコンビナーゼの改変によるヒト細胞での大型DNA精密挿入
Optimization of IS621 recombinase/bridge RNA-directed recombination for precise insertion of large DNA fragments in human cells. Guo, J., Song, Z., Wang, W. et al. Nature Communications (2026).
https://doi.org/10.1038/s41467-026-74164-z
CRISPR/Cas9では、大きなDNA断片を狙った位置に正確に挿入することが依然として難題です。本研究では、細菌由来のIS621リコンビナーゼとbridge RNAをヒト細胞向けに改変し、標的ゲノムと挿入したいドナーDNAをRNAで橋渡しする新しい大型DNA挿入法を開発しました。最適化されたenIS621-tebRNAシステムは、kbスケールのDNAカーゴを最大27.75%の効率で、挿入痕跡を抑えて導入可能でした。さらに、CD19 CARをT細胞療法関連座位へ、血友病B治療を想定したFactor IX遺伝子を標的座位へ挿入し、機能的な発現も確認しています。CRISPRとは異なる原理で大型遺伝子を精密に組み込む技術として、細胞治療・遺伝子治療・合成生物学への展開が期待されます。一方で、配列制約やオフターゲット挿入評価は今後の課題です。
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