メールマガジン:ゲノム編集論文㉕

セツロテックでは、月に一度、最新のゲノム編集に関する情報をお届けするメールマガジンを配信しています。今回の記事では、メールマガジンの人気コーナー「最近のピックアップ論文」から厳選した内容をご紹介します。

配信号:2026年5月

1. 真核細胞を「取捨選択」できるCRISPR-Casシステム

RNA-triggered cell killing with CRISPR–Cas12a2, Scholz et al., Nature. 2026 May 6 (Online ahead of print).

真核細胞において「不要な」細胞だけに細胞死を誘導できる新たな分子ツールの報告。独Akribion Therapeutics社のScholzらは、タイプV型のCRISPR-CasシステムのひとつCas12a2が、真核細胞内で標的mRNAを認識すると、その細胞のゲノムを破壊(トランスで二本鎖DNA切断が大量に発生)して細胞死を誘導する「プログラム可能なDNAシュレッダー」として利用できることを示した。例えば、KRAS遺伝子の癌変異をCas12a2の標的とすると、in vitro試験では、この変異を持つヒト細胞の増殖を50%抑制する(シスプラチンなどの抗癌剤と同等の効果)一方で、遺伝子が正常な細胞には全く影響を与えなかった。転写プロファイルに基づいて、健康な細胞を傷つけることなく有害な細胞のみを除去できる可能性が示されたことは、遺伝子治療の新たな方向性を示す。(事業開発部T)

2. Base Editingのオフターゲット変異を高精度に可視化──ゲノム編集安全性評価の新手法

Sensitive and unbiased genome-wide profiling of base-editor off-target activity using CHANGE-seq-BE, Nature Biotechnology. Lazzarotto, C. R., Katta, V., Nguyen, N. T., et al. (2026).

CRISPRを利用したBase Editingは、「DNAを切断せずに1文字だけを書き換える」次世代ゲノム編集技術として期待されています。しかし、その安全性評価は依然として大きな課題でした。本研究では、CHANGE-seq-BEという新しい解析法を用い、Base Editorによるオフターゲット変異をゲノム全域で高感度・非バイアスに検出することに成功しました。特に、従来のCas9解析では見落とされていたBase Editor特有の変異パターンが多数確認され、ABE8eでは検出されたオフターゲットの98.8%がCas9とは異なる独自イベントであることが示されました。これは「DNAを切らない編集=安全」という単純な理解では不十分であることを意味します。ゲノム編集が医療応用へ向かう中で、本研究は安全性評価の新たな標準を提示する重要な論文と言えるでしょう。(共創推進部U)

 

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